毒母は毒母に育てられていた。ならば、私も毒母になってしまうのだろうか。そんな不安にさいなまれた現在30代の女性。子供に八つ当たりしてしまう自分に気づき、自分のメンタルの保ち方や親との距離感を工夫した。また、友人からの何気ない一言が胸に刺さり、恨み続けていた母親への気持ちにも変化が出始めた――。(後編/全2回)
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【前編のあらすじ】関西地方在住の如月杏さん(仮名・30代)の父親の家は代々宗教を信仰しており、嫁入りした母親は自分の両親からの反対を押し切る形で結婚。母親はこの宗教にのめりこみ、如月さんにもしつこく強制した。また、自由を与えず、過干渉する毒母だった。小学校半ばからいじめに遭ってから不登校になり、笑顔のない子に。中学校ではヤンキーグループに加わり、高校では毒母の呪縛から逃れることに成功。17歳の時に海で出会った20歳近く上の男性と交際を始めた(のちに相手の浮気で別離)、徐々に笑顔を取り戻していく一方で、ほとんど家に帰らなくなる。

前編はこちら

母親が娘の彼氏を宗教に勧誘

高校を卒業後、県外の福祉系の会社に就職した如月杏さん(仮名・30代)は20代半ばの冬、友だちとスノーボードをしに雪山へ行ったときに、上級者コースで難易度の高い滑りを華麗に決めている男性に遭遇。一瞬で心を奪われた如月さんは自ら食事に誘い、交際に発展した。

約半年後に妊娠が発覚すると、彼氏は「結婚しよう」と言った。

しかし彼氏が如月さんの両親に結婚の挨拶をしにいく予定の前日、如月さんは流産してしまう。それでも彼氏は「結婚しよう」と言ってくれたため、そのまま如月さんの実家を訪れることに。

ところが、あろうことか、かねてより宗教にハマっている母親が彼氏に言った。

「宗教をしなさい。流産したのは信心をしていないからだ」

「私も彼も、そんなことを口走る母親に対して『人としてありえないな』とドン引きしました。彼は『結婚を白紙にする』と言い出し、私はショックでその後、誰とも連絡を取らずに閉じこもりました」

しばらくホテルに滞在していたのだが、その間に父親や祖母の説得のおかげで、母親は如月さんと彼氏が宗教をしないことを聞き入れた。彼氏やその両親は「如月さんの母親と結婚するわけではないのだから、本人が宗教をする気がないなら結婚しても大丈夫」と思い直してくれた。無事結婚した如月さんは、再び妊娠し、翌年に第1子を出産した。