5年後にくる世界1億台時代のキーワードは「新興国」と「環境技術」だ。日本メーカーはその技術をいち早く磨いてきた。新興国においても、世界を圧倒し続けることができるのか。

熾烈な競争の目玉は環境技術

鈴木修スズキ会長兼社長は言う。「インドなど新興国のお客さんは、日本以上に燃費のいい車を欲しがっている。(12年9月発売のワゴンRに搭載した発電や蓄電による)低燃費技術はまず日本で展開していくが、いけると自信を持った段階でインドにも移していきたい」。

布野幸利トヨタ自動車副社長も、「トヨタは強みであるハイブリッド車(HV)を、新興国に積極的に出していく方向です。20世紀とは違って、いまは地球規模での環境対策を前倒ししていく必要があるから」と話す。

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新興国でも進む排出ガス規制、燃費規制

世界の自動車市場は急拡大していくが、牽引するのは新興国だ。2012年の世界販売の見込み約7872万台に対し、早ければ17年にも1億台を超える勢いにある。5年間で、市場は3割近くも成長し、伸びを実数で表すと2157万台以上となる。このうち、8割強が中国やインドなどの新興国市場分が占める。

一方、欧州連合(EU)が15年には完全実施を予定する自動車のCO2排出量規制など、先進国の環境規制への対応も自動車各社は急がなければならない。環境規制は、市場が膨らむ新興国でも強化され(図参照)、各国での補助金や税の減免などとも絡んでくる。

豊田章男トヨタ自動車社長は「私自身が発表したトヨタグローバルビジョンにある通り、これからトヨタが攻めるのは『環境車』と『新興国』。エネルギー問題は避けては通れないから」と話す。

三菱自工の益子修社長も言う。「環境技術と新興国は、当社の古くからのテーマ。特に環境の頂点技術であるEV(電気自動車)『i-MiEV』を持っていることは、新興国市場での大きなブランドになる」。

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世界の新車販売台数5年後に1億台へ

1億台へと増大するまでに、環境と新興国をいかに攻略していくかは、日系自動車メーカーにとって共通のテーマだ。

土屋勉男・桜美林大学大学院経営学研究科客員教授は、次のように指摘する。

「自動車産業は巨大だが、いまだに成熟していないのが特徴。本来なら、汎用品(コモディティ)化して圧倒的優位な企業が支配しているはずなのに、コモディティ化する圧力よりも成長力が勝っている。新興国市場への新規参入企業は続き、競争は激化していくでしょう。そして、熾烈な競争の目玉になるのは、日本メーカーが強みを持つエコカーと環境技術です。環境技術のイノベーション(技術革新)が進んでいることもコモディティ化しない理由の一つです」