中国でトヨタと日産が激突

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新興国市場のポートフォリオ

そんななか、現在EVを量販しているのは三菱自工と日産、GM、テスラモーターズ、中国BYD、ホンダぐらいで、PHVではトヨタだけ。参戦できるプレーヤーは少なく、こうした技術を持つメーカーの優位性は高いのだ。

EV「リーフ」を展開する日産のカルロス・ゴーン会長兼CEOは、「技術を持っていることは、大きなプレゼンス。助成金など政府の支援策により、EVを伸ばしていく」と言い切る。志賀俊之日産COO(最高執行責任者)は言う。「これだけのビッグチャンスを、日産はモノにしなければなりません。500万台は、初めて自動車を買う人が中心。内燃機関を経験せずに、EVから入るのです。中国政府は、彼らにインセンティブを与えてEVを一気に普及させ、エネルギーの効率利用、環境保全に力を入れていくのだと思います。中国は本気です。日産は、技術で応えていきます」

日産は中国の合弁会社、東風汽車で生産するEVを、東風の「ヴェヌーシア」ブランドで展開していく計画だ。

90年代に経営危機に陥った日産が中国に進出したのは03年。日系で最後発だった。だがいま、販売台数が100万台を超えているのは日系では日産だけだ。

「武漢に本社があり、内陸部に強い販売網を持つ東風汽車とパートナーを組んだのが日産の勝因」と土屋教授。中国内陸部には8億人の農民がいる。中国政府は農村部の自動車普及政策「汽車下郷」を実施した。農民の生活向上と地域格差の是正、内需拡大を目的とした自動車購入の補助金策だ。その対象エリアと東風の販売網が、重なったのである。日産は最後に参入したためパートナーは地方の東風しか残っていなかったが、逆にこれが当たったのだ。