あらゆる部署から全社員が海外へ出ていこうという時代。日本人に求められる「新しい働き方」と「マインド」とは。
工場海外移転の落とし穴
世界の自動車市場は、新興国が牽引しながら急拡大を続けている。その一方で、新興国も含めて自動車の環境規制は厳しくなっていく。このため、「環境技術を持って、新興国市場を攻めていく」(カルロス・ゴーン日産自動車会長兼CEO)のは、環境技術を持つ日本メーカーの基本的なシナリオだろう。だが、ことは一筋縄では運びそうにない。
とりわけ、1ドルが80円を切る円高の定着は日系各社にとって共通の痛手だ。
「日産の戦略をより完璧にするためには、最終的により力強いベースを日本につくらなければならない。しかし為替レートの状況から、ベースづくりがままならないのです」とゴーンは訴える。
土屋勉男・桜美林大学大学院経営学研究科客員教授は、次のような指摘をする。
「新興国を中心に需要が拡大し、環境技術が進化し続けている自動車は、(家電のように)汎用品(コモディティ)化していません。ただし、部分的に汎用品化する要素がある。それは、円高対応により始まった日産・マーチや三菱・ミラージュに代表される逆輸入車です。いずれもタイで生産していますが、輸入量が増えていけば日本国内の雇用にも影響するでしょう。逆輸入車は円高下で短期的には有効でしょうが、長期的には日本のものづくりにとってマイナスです」
10年7月から日産はタイで生産したマーチを日本で販売し、三菱自工もタイ製ミラージュを12年8月から日本市場で発売した。