海外市場への「全員攻撃」が始まる

ASEANは「圧倒的に日本メーカーが強い。モータリゼーションを、日本メーカーが主導したためです」(布野幸利トヨタ副社長)。「韓国メーカーもなかなか入り込めない」(益子三菱自工社長)と言う。

トヨタ自動車副社長 
布野幸利氏

ただし、いままでとは違う出方を日本企業はしている。どうやら、単なるトランスプラントの増強とは違うのだ。

スズキは相良工場などからワーカーの“手練れ”を150人、タイ工場に送り込んでいる。各工程でタイ人の新人たちと一緒に働き、仕事ぶりを見せている。

「初めての試みだが、うまくいっている。タイ製スイフトはオーストラリアなどにも輸出するため、最初から高い品質でなければならないのです。言葉? それは大丈夫。現場のワーカー同士、心で通じ合えるのです」と鈴木修。

三菱自工も、タイをはじめ新興国に駐在する人員を増やしている。「日本人が足りないのです。タイでは大きく増員させましたが、中国、ロシア、インドネシアと工場を立ち上げていくため、現地で指導をできる日本工場のワーカーは必要。あらゆる部署が海外に出ていくことになるため、会社として語学研修も充実させているところです」と益子は話す。

新興国をコアとする自動車市場の拡大は、日本人に新たな働き方を求めている。家電が歩んだ“コモディティへの行進”とは異なる全員攻撃が始まっていく。

「日本人はこれから海外で活躍することが、ごく普通になる」と益子は言い切る。

開発も工場とともに出ていき、有効な技術を例えばタイで開発していく形だ。