大学時代から30年も連れ添った夫はダメ男だった。常に複数の愛人がいて、妻には出張と称して、国内外で不貞を働いていた。現在50代の妻から問い詰められた夫は行方をくらました。不倫されるだけでなく精神的なDVを受け続けた妻は取りつかれたかのように夫の部屋からレシートの山を発掘し、探偵の力も借りながら念入りに証拠固めをしていった――。
レシートを確認する女性の手元
写真=iStock.com/microgen
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前編のあらすじ】21歳の時にアルバイト先で出会った2歳下の男性と同棲を開始した女性(現在50代)。男性は浮気性だったが、女性は大学卒業後、男性とともにアメリカに留学し、現地で結婚、2人の子を出産。だが女性が30歳の時、夫が不倫。日向さんは離婚することを決め、子供を連れて帰国した。最終的に女性とも離婚し、愛人にも捨てられた夫は「やっぱりあなたを愛している」と女性に復縁を迫り、女性はそれを受諾して再婚。ところがそれから十数年後、夫が1400万円の借金をしていることがわかり、別の女との不倫も発覚した。

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パンドラの箱

「夫は出張とウソをついて不倫していたに違いない」

出張から戻った夫(当時48歳)を問い詰めると、夫は家を飛び出し、行方不明になってしまった。日向杏樹さん(仮名・当時50歳・バツ2)からの電話やメールはもちろん、子どもたちからの連絡も無視し、音信不通となった。

もともと外資系企業で働いていた夫は、2012年から小さな会社を経営しているが、常駐するスタッフは一人もおらず、事務所に電話をかけても誰も出ない。

日向さんは、これまでほとんど立ち入らなかった自宅の夫の作業部屋に入った。すると夫の会社の帳簿を発見。帳簿の他に、会社設立時からのすべての領収証やレシートが山のようにあった。

「探偵に依頼して調べたところ、夫の愛人は、2019年9月から夫の会社で働いていた愛人Aでした。夫は帳簿や過去の領収書を社内で働く愛人Aに見られたくなかったのでしょう。だから家に隠しておいた。でも不倫で頭がやられている夫は、これらを家に残したまま、愛人のところに逃げて行ったわけです」

夫は過去に何度も「出張から帰宅する」と言った日に帰宅しなかったことがあったため、日向さんはカレンダーアプリ“Time Tree”でスケジュールを共有し、記録を残すように提案。日向さんは山のようにある領収証の日付と、夫が書き込んでいた“Time Tree”のスケジュールを照らし合わせてみた。

夫が「博多出張」と書き込んでいる日、領収証は「東京」だった。「名古屋」と書き込んでいる日、領収証は「神戸」だった。夫の出張は9割がた嘘だった。

愛人Aと交際が始まったのはこの頃だったのだろう。2019年の夏から、愛人Aが住む地域の領収証が増える(Aが働き始める前から交際していた)。夫は電車移動のみなのに、パーキングに5〜6時間止めた領収書。日向さんの誕生日、日向さん自身は娘と旅行に出ていたのに、2人分のケーキの領収証。高級ホテルで昼からシャンパンランチ2人分。九州ではタクシーで海岸線ドライブ……。

11月22日のいい夫婦の日。花屋で1万円の領収書。日向さんに花が届くことはなかった。

海外旅行へもよく出かけていた。100万円近いカードの明細書が見つかった。その中に日本円で11万円の買い物があった。

店名はアルファベット3文字。娘がその3文字を検索すると、「田崎真珠」と判明。日向さんは田崎真珠のアクセサリーなど1つも持っていない。

「夫は女に狂っていたのだと思いました。大家さんへの1400万円もの借金を返さず、夫は女と豪遊していたのです。不倫発覚後、パンドラの箱を開けてみれば、夫の病気はすでに手のほどこしようのない末期だったのでした」