共依存

2020年8月初旬。日向さんは一人暮らしをするための物件探しを始めた。弱り切っていた日向さんの代わりに、娘が積極的に動いてくれて、8月末には一人暮らしをスタート。ところが、無理がたたったのだろうか。9月に体調を崩してしまった日向さんは、傷病休暇に入った。

心療内科に通院しはじめた日向さんは、医師に対して、夫の不倫は今回が初めてではないこと。夫は一切不倫を認めず、謝罪もないこと。出て行ってから自分だけでなく、子どもたちからの電話もLINEも無視していること。夫は自分の周りの人たちに、「妻がモラ妻で自分が被害者だ」と主張していること。夫の愛人は、過去も含め、日向さんが名前を把握しているだけで6人いること……などを話した。

カウンセリングを受けている女性
写真=iStock.com/PrathanChorruangsak
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すると主治医は、「あなたは悪くありません。お話をお聞きする限り、夫さんは人格障害の可能性があります」と言った。重度のセックス依存性、恋愛依存症、お金依存症かもしれないと。

続けて主治医は、「あなたはそのような男性に依存する“共依存”の状態かもしれない。共依存であるあなたは、アダルトチルドレンなのですよ」と言い、日向さんの生い立ちをたずねる。

日向さんの父親は、子煩悩だったが定職に就かず、不貞行為を繰り返し、母親を何度も泣かせていた。飲食店を数軒持つ経営者だった母親は、それでも父親と離婚することはなかった。つまり構図としては、母親と自分、父親と夫がそっくりで、両親と同じような家庭を築いていたのだ。

主治医は、「あなたとお母さんが共依存の関係で、それが現在のあなたと夫さんとの関係をつくっているとも考えられますね」と言った。日向さんは、まずは夫ではなく、自分と向き合わなければならないことを悟った。そして主治医から勧められた、共存の自助グループに足を運んだ。