ギャンブル家族
北海道出身で現在は東北地方に在住の桜木潤さん(仮名・30代・既婚)は、インフラ関係の会社に勤める父親と、専業主婦の母親の間に生まれた。両親は中学校の同級生で、高校時代に交際が始まり、22歳で結婚した。夫婦仲は良好、桜木さんの3歳上の兄と、2歳下の妹とのきょうだい仲も良かった。
そんな一見すれば、ごく普通の仲の良い家族に見える桜木家だが、一般的な家族とは少し違っていた。桜木家では、日常的にギャンブルを楽しんでいたのだ。
両親は、桜木さんが物心ついた頃にはすでにギャンブル好きで、競馬、競輪、パチンコ、スロット、宝くじまで、日本にあるほとんどのギャンブルを経験。子どもたちが小さいうちは控えていたようだが、それでも桜木さんが3〜4歳の頃には、競馬場に連れて行ってもらった記憶があった。桜木さんが中学に上がる頃には、平日の夜は家族でパチンコへ。土日は競馬や競輪場へ行くのが当たり前のようになっていた。
父親が転勤族だったため、桜木さんは小学校入学後、転校を何度も繰り返したが、人見知りせず、誰とでもすぐに友達になれる社交的な子どもに成長した。どこに行ってもすぐに打ち解けることができ、友達づくりに困ったことはなかった。
しかしその反面、長く深く付き合える友達ができず、その場だけ楽しく過ごす浅い付き合いがほとんどだった。
中学校に入った桜木さんは、剣道とバスケットボールに熱中していた。剣道は、初段をとってやめ、バスケットボールはレギュラー選手としてプレーしていた。マンガ『スラムダンク』にハマり、あまり勉強をしなかったが、両親は勉強や成績のことに口出ししない人だった。
その結果、桜木さんは高校受験では第一志望の普通科の高校に落ち、第二志望の工業高校へ入学。高校でもバスケットボールに打ち込み、引退後はひたすら友達と遊んで暮らした。それでも内申点が良かったため、高校卒業後は上場企業に就職することができた。