共依存の自助グループ

共依存の自助グループに行くと、日向さんは「言いっぱなし聞きっぱなしがルール」と説明を受けた。その後3〜5人ほどが集まった部屋で、それぞれが自分の体験を語っていく。日向さんはひとりの女性の話に耳を奪われた。女性が語る話の中には、日向さんの夫と全く同じように行動する夫がいた。そしてその女性は、その夫に対して日向さんと全く同じ行動をしていたのだ。

「驚きでした。心療内科の医師の言葉が理解できました。その後も、セックス依存と借金依存の夫、それを助けてしまう共依存の女性の話が続き、これまた私の夫と瓜二つの話でびっくりしました」

日向さんは毎回自助グループに足を運ぶようになった。夫に不倫と借金をされて、もう5年も10年も自助グループに通っているという2人の女性と親しくなり、日向さんは彼女たちにも救われる思いがした。

「数年前、多目的トイレでの不貞行為が発覚したお笑い芸人は、『病院に行ったけど、病気ではなかった』と記者会見で語ったようですが、アメリカのプロゴルファーは、自らセックス依存症であることを認め、告白しました。私は夫に病院に行くように言ったこともありましたが、夫は自分が病気だとは認めず、病院へ行ってくれることはありませんでした」

体調が回復してきた日向さんは、通院や自助グループへの参加と並行し、探偵の手助けを得ながら愛人たちへの慰謝料請求にかじを取った。

ひび割れたコンクリートに描かれた、男女の別れのイメージを連想させるピクトグラム
写真=iStock.com/hachiware
※写真はイメージです

日向家のタブー

筆者は、家庭にタブーが生まれるとき、「短絡的思考」「断絶・孤立」「羞恥心」の3つが揃うと考えている。

日向さんと夫は、出会って3カ月で同棲が始まり、嘘つきで浮気症な男性だと気付いていながら、一緒に海外留学を決行し、妊娠したことで結婚。そして結婚後、5年と経たずに不倫が発覚して離婚するが、酷い裏切りを何度も経験しながらも、同じ相手と再婚。その約30年後、さらに酷い裏切りを知り、日向さんは傷ついたわけだ。

だが、ここまでの深手を負った主因は、もちろん夫にあるが、それだけではなく日向さん自身に短絡的思考があったためではなかっただろうか。同棲していた頃や最初の不倫の時など、“夫の欠陥”を知る機会は何度もあった。もっと早くに思いとどまっていれば、避けられた傷だった。

また、日向さん自身、“仲良し夫婦”だと思い込もうとしていたようだが、その実、夫に関して知らないことが多すぎる。ただ、夫は息をするように平気で嘘をつく人なので、知らないのは仕方がないことかもしれない。夫の周囲には、夫婦にも家族にも誰にも崩し得ない“壁”があったのではないかと想像する。この“壁”が、家族の中での夫の断絶や孤立を生んだ。

そしてそうした“夫の欠陥”は、日向さんにとって目を背けてしまいたいほど恥ずかしいものだったに違いない。日向家のタブーは、これら3つの要因と、夫と日向さんそれぞれの『依存』によって生まれたものだった。