周囲を気にして黙ってしまう、みんなが守っているルールに同じように従っている……。気がつくと空気に左右されがちな行動。しかし、それには理由があった! 社会心理学の専門家が「空気」のメカニズムを解説。適切な関わり方を学ぶ。

権力やお金も「空気」で成立している

仕事でもプライベートでも、私たちは常に周囲の「空気」を気にしながら生きています。なぜ私たちは、これほどまでに空気に影響されるのでしょうか。そして、この空気とは一体何なのでしょうか。

この問いを考えるうえで参考になるのが、アンデルセンの有名な童話「裸の王様」です。詐欺師の仕立屋に「愚か者や地位にふさわしくない者の目には見えない服」を着せられた王様は、愚か者だと思われたくないため、その服が「見えない」とは言えません。周囲の大人たちも王様は裸だと思いながら、周囲が黙っているのを見て、自分も口をつぐみます。「見えない自分の目がおかしいのではないか?」「周りの人には本当に服が見えているのかも……」と各自が思いながらも、その不安を発信できないのです。

自分の見ているものに確信を持てず、「自分だけが他と違う考えを持っているのではないか」と各自が同時にばらばらに思う。そのような状態を社会心理学では「集合的無知」と呼びます。そうなると、はじめに出た意見が注目されて、反対意見を言いにくくなります。重要なのは、周囲の沈黙に合わせて黙ることが、周囲をいっそう黙らせる圧力になるという点です。そうして、さらに沈黙が広がっていく現象が「沈黙の螺旋らせん」です。少数派はますます意見を表明できなくなり、多数派の意見は目立って、実際以上に大勢から支持されているように見えます。