徳川家康の正妻、築山殿はどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「家康と不仲だった築山殿は、武田方の医師と関係を持ち謀反を画策したと記す史料もある。その裏切り行為の裏には嫉妬心と子供を守ろうとする気持ちがあったのではないか」という――。
なぜ今回の大河の徳川家康は泣いてばかりなのか
松本潤演じる松平元康は、なにしろよく泣く。目下、大河ドラマ『どうする家康』のなかで、いちばん気になる点かもしれない。
戦乱の世には、多くの人が日常的に気持ちを高ぶらせ、いまよりも喜怒哀楽が激しかったことは想像にかたくない。それにしても、ここまで泣いたか、とは思う。
それはともかく、いまのところドラマのなかで、元康が泣く大きな原因になっているのが、織田信長に討たれた今川義元の嫡男、氏真のもとに残したままになっている妻子、すなわち瀬名こと築山殿と、彼女とのあいだに生まれた嫡男の竹千代(のちの信康)と長女の亀姫の3人である。
事実、元康が織田信長につくと決めたため、氏真が元康に対し「岡崎逆心」と怒りをあらわにし、築山殿と子供たちの命は危険にさらされたようだ。
しかし、それは戦国の世にあってはよくあること。元康がそれを承知のうえで、自身の領国を守るために妻子を半ば捨てる決断をしたのである。
そうだとしても、元康にとって妻子が気がかりでなかったとは言えない。むろん視聴者にとっても、ドラマで有村架純が演じるかわいく健気な築山殿の行く末がどうなるかは、気になるところだろう。