「プーチン後」の報道が拡散するのは異例

ロシア軍のウクライナ侵攻が長期化する中、年明けのロシア・メディアは2024年3月の大統領選をめぐる展望記事を次々に掲載した。プーチン大統領の病気説が公表され、後継者候補を紹介、意外な人物の名前も挙がった。

ロシアのプーチン大統領(2023年2月1日、ロシア・モスクワ郊外のノボ・オガリョボ州公邸にて)
写真=SPUTNIK POOL/EPA/時事通信フォト
ロシアのプーチン大統領(2023年2月1日、ロシア・モスクワ郊外のノボ・オガリョボ州公邸にて)

英国のロシア専門家、マーク・ガレオッティ氏は、「プーチンの賞味期限は切れた。現状にうんざりする人が多く、後継者を期待する声が強い」と指摘する。世論調査のプーチン支持率は引き続き高いものの、戦争長期化で社会に厭戦えんせん気分が広がっているようだ。

ウクライナ侵攻は「プーチンの戦争」であり、プーチン氏が退陣すれば、戦争は終結に向かうことになる。メディア統制が厳しいロシアで、「プーチン後」に触れる報道が拡散するのは異例。いずれ規制される可能性もあるが、現時点で大統領選の有力候補を展望する。

野党、ジャーナリスト、柔道選手、実業家…

ロシア有力紙「コメルサント」(1月13日付)は、クレムリンがプーチン氏の5選に向けて大統領選の準備に着手したと報じた。次回大統領選は今年12月に公示され、24年3月17日投開票の見通し。プーチン氏は新たに2期12年の続投が可能で、12年間勤め上げると、計36年の長期政権となる。

プーチン氏自身は昨年11月の会合で、大統領選出馬の可能性について、「私には憲法上、再出馬の権利がある」としながら、出馬するかどうかは明言しなかった。

とはいえ、5選出馬は既定路線だろう。プーチン氏が出馬しないと表明すれば、すぐにレームダックとなり、ウクライナの戦争指導は困難だ。後継政権が戦争を終結させれば、苦戦の責任や戦争犯罪を問われかねない。憲法規定では、大統領経験者は終身上院議員として訴追を免れるが、この種の規定は意味がない。プーチン氏はあくまで、戦争を長期化させて政権延命を狙うだろう。

とはいえ、ロシアのメディアでは年明け後、後継者問題をめぐる話題がにぎやかだ。

政府系紙「イズベスチヤ」(1月23日)によれば、2018年大統領選に野党・共産党から出馬し、次点だった農場経営者のパベル・グルジーニン氏、野党・公正ロシア幹部でプスコフ市議会議員のオレグ・ブリャチャク氏、改革派政党・ヤブロコ幹部のニコライ・リバコフ氏、18年大統領選にも出馬した女性改革派ジャーナリストのクセニア・サプチャク氏、五輪にも出場した親日家の柔道選手、ドミトリー・ノソフ氏、実業家のセルゲイ・ポロンスキー氏ら、少なくとも11人の多彩な面々が早々と大統領選立候補を表明しているという。