プーチン氏の後継者は「45歳の若手閣僚」か

「軍保養所」と題したネットメディアは1月、大統領選の分析記事で、①政治エリートが自分たちの身の危険を感じてクーデターを起こす可能性がある、②70歳のプーチンはもう若くなく、膵臓すいぞうがん、白血病、パーキンソン病などの臆測があり、統合失調症の疑いもある――とし、プーチン時代は長くないと分析した。

同メディアは後継者として、プーチン氏のボディーガード出身で、モスクワ南部トゥーラ州知事を務めるアレクセイ・ドゥーミン氏を挙げた。同氏は連邦警護局(FSO)出身で、プーチン氏がシベリアで休暇中、クマの襲来から守った忠誠心で知られるが、根拠は示していない。

「面白い人生」という新興ネットメディアは昨年11月、プーチン氏が出馬しない場合の与党・統一ロシアの後継者として最も有力なのは、ドミトリー・パトルシェフ農業相(45)だと伝えた。プーチン氏の盟友で保守派のニコライ・パトルシェフ安保会議書記の長男で、「世代交代の象徴になる」という。

農業相は「教養があり、数カ国語を話し、若く、戦争の経験もない」という。経済学博士号を持つ銀行家で、30代で閣僚になった。父親のにらみが利き、オリガルヒとシロビキ(軍や諜報機関出身者)の両方から支持を受けやすく、「ダークホース」とされる。

雪に覆われているクレムリン
写真=iStock.com/brunocoelhopt
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体制への不満が社会に広がっていることの表れ

このほか、後継候補として挙げられるのが、ミハイル・ミシュスティン首相、モスクワ市長のセルゲイ・ソビャーニン氏らだ。憲法規定では、大統領が職務執行不能に陥った時、首相が大統領代行に就任する。ただし、ミシュスティン首相は経済テクノクラートで、ウクライナ侵攻についてほとんど発言していない。プーチン氏は近く議会で年次教書演説を行い、首相を交代させるとの説もあり、その場合、後任の首相が有力後継候補になり得る。

ソビャーニン市長も今年9月の統一地方選が改選時期に当たる。来年の大統領選を控えた今年のロシアは「政治の季節」で、政治的緊張が高まろう。戦時下で多彩な後継候補が取りざたされること自体、プーチン体制への不満や嫌悪感が社会に広がっていることを示唆しており、要注意だ。

もう一人、大統領選出馬の大穴が、収監中のアレクセイ・ナワリヌイ氏かもしれない。2020年に化学兵器「ノビチョク」を盛られて重体になり、ドイツで治療を受けて帰国後、拘束された同氏は懲役9年の刑で服役中。その経緯を描いた映画『ナワリヌイ』は今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた。

可能性は極めて低いものの、プーチン政権が突然終焉しゅうえんを迎える事態でも起きれば、釈放され、大統領選出馬の道が開かれるかもしれない。

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