注目はプーチン氏に物申したクドリン氏
選挙法によれば、下院に議席を持つ5政党は優先的に候補者を擁立できるが、それ以外の候補者は30万人の署名を集める必要があり、署名審査で失格しかねない。それでも、戦時下での相次ぐ出馬表明は政権にとって好ましくない。
注目株は、ウクライナ侵攻に反対するプーチン氏の古い友人、アレクセイ・クドリン元財務相の動向だ。10年間財務相を務め、欧米諸国の評価が高い改革派のクドリン氏は、昨年2月のウクライナ侵攻直後にプーチン氏に面会し、「戦争はロシア経済を破綻させ、社会に重大な亀裂を招く」として直ちに中止するよう求めたという。
昨年秋、会計検査院長を辞めて民間のネット企業に移ったが、下院に議席を持つ新興政党「新しい人々」がクドリン氏の大統領候補擁立を検討中と報じられた。「クドリン大統領」なら、戦争は終結に向かうだろうが、本人は出馬を否定している。プーチン陣営は全力で出馬を阻止しようとするだろう。
岸田首相をののしったメドベージェフ前大統領も?
ネットメディア「レポルチョール」(1月2日)は、ドミトリー・メドベージェフ前大統領が極右政党・自由民主党の大統領候補として出馬し、プーチン氏と一戦まみえる可能性があると報じた。
メドベージェフ氏は2008年から4年間大統領を務めた後、首相に転出。2020年に安全保障会議副議長に左遷された。当初のリベラル派から極右に変身し、SNSで欧米諸国を激烈に批判している。
「ロシアを通常戦力で脅せば、核戦争だ」「ドイツはポーランド、チェコなどを衛星国にし、第四帝国を創設しようとしている」「日米首脳会談でロシアの核使用に警告した岸田文雄首相は閣議で切腹すべきだ」といった罵詈雑言の強硬発言は、ロシア国内でも顰蹙を買っている。
それでも、極端な愛国主義発言は昨年死去した極右政党・自由民主党の故ウラジーミル・ジリノフスキー前党首に匹敵し、自民党大統領候補として出馬するのでは、との臆測が出ている。
「レポルチョール」は、12月31日に新年のあいさつをしたプーチン大統領に続いて、メドベージェフ氏もビデオあいさつしたことを指摘。「メドベージェフ氏のSNS発信はプーチン氏より強硬で、愛国主義者の支持を得ている。自民党党首に就き、大統領選に出馬する可能性がある」と伝えた。とはいえ、30年にわたり忠実な部下だったメドベージェフ氏が、ボスに反旗を翻すとは思えない。