ロシア陸軍の精鋭部隊が壊滅状態になった

第200独立機動ライフル旅団は、ロシア陸軍屈指の精鋭部隊のひとつだ。少なくとも昨年2月にウクライナ侵攻に投入されるまでは、そうであった。

2023年1月7日、ロシア、モスクワのクレムリンにある生神女福音大聖堂で正教会のクリスマス礼拝に出席するプーチン大統領。
写真=SPUTNIK/時事通信フォト
2023年1月7日、ロシア、モスクワのクレムリンにある生神女福音大聖堂で正教会のクリスマス礼拝に出席するプーチン大統領。

旅団はもともとノルウェーとの国境付近で核兵器庫を守っていたエリート部隊だが、ウクライナ侵攻当日の早朝から前線に投入された。

しかし、欧米メディアが最近になって旅団の敗走ぶりを報じた。そこに精鋭部隊の見る影もない。指揮官は負傷し記憶喪失に見舞われ、所属兵は「部隊は崩壊状態」だと叫ぶ。

旅団の苦しい現状を指摘する米ワシントン・ポスト紙は、侵攻前には1400人から1600人が所属していた旅団のうち、2カ月足らずで3分の1ほどが死亡したと報じている。

かつて「ロシアで最も傑出した部隊のひとつ」とさえ言われた旅団は計500人以上の兵を失い、「よろめきながらロシア国境へ戻ってきた」という。ウクライナ側によるわずか40分の砲撃で不意を打たれ、敗走したこともあったと同紙は報じる。

旅団はその後も志願兵および動員令で駆り出された予備役らで不足を補い、かろうじて体裁を保っている。だが、急遽召集された彼らに渡された装備は「1941年製の塗装ヘルメットと防弾板の入っていないベスト」という状況だ。

ウクライナ側はロシア陸軍が誇ったエリート部隊が「一掃された」と宣言しており、EU情報機関の高官も旅団は「再建に数年かかる」惨めな状態だと分析している。

ウクライナ侵攻以降、ロシア軍の弱体化は度々報じられている。組織の腐敗や度重なる敗走といった弱さは一部の部隊に限った現象ではなく、先進の装備の使用を許された精鋭部隊をもむしばんでいたようだ。

最高の武器、弾薬、車両を与えられていた

第200独立機動ライフル旅団は平時、北極圏を拠点としている。ロシアの北西端に位置するムルマンスク州ペチェンガの町で核戦略の一翼を担う。

米軍事情報サイトのソフリプは、「ロシア陸軍のなかでも『エリート』の戦闘部隊であり、ロシアが保有する最も近代的な兵器を装備しているとされてきた」と述べている。「ロシアで最高の武器弾薬と車両」を与えられている部隊でもあったという。