仮にアメリカによってロシアの陸上の核ミサイル拠点が壊滅した場合、ロシアは北方艦隊を大西洋に展開し、海洋から核攻撃を実施するシナリオが想定される。冷戦時代以来、こうした潜水艦の母港となっているのがペチェンガの港だ。

ソフリプの記事によると、第200旅団が昨年1月、ウクライナ侵攻に先立ち不穏な動きを見せた。拠点のペチェンガから、ロシア南西部に位置する工業都市クルスクまで、「戦闘訓練」の名目で南下したのだ。列車による1900キロの大移動であった。

クルスクからさらに200キロほど進むと、ウクライナのハルキウに近い国境へと出る。2月下旬からの侵攻を意図した動きだったとみられるが、旅団が多くの兵を失う悲惨な戦闘の幕開けとなった。

ロシアの第200独立機動ライフル旅団
ロシアの第200独立機動ライフル旅団(写真=ロシア連邦国防省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

侵攻当日から連戦連敗

ウクライナ侵攻当日の朝、意気揚々とウクライナに乗り込んだ第200旅団は、ウクライナ側の待ち伏せ攻撃を受け大混乱に陥る。

夜までに戦車やBM-21「グラート」自走多連装ロケット砲などが破壊された。ワシントン・ポスト紙は、戦車やロケットランチャーなど「部隊の最も強力な兵器の多く」が破壊または鹵獲ろかくされたと報じている。

ノルウェーのオンライン新聞であるバレンツ・オブザーバー紙は、現地入りしたジャーナリストの報告をもとに、装甲車やロシアのカマーズ社製トラックなど30台以上が破壊あるいは鹵獲されたと報じている。2019年に新調したT-80BVM主力戦車についても、26台のうち18台を失った。

想定外の被害に愕然がくぜんとした第200旅団は、ハルキウ北部に構えた拠点まで這々ほうほうていで撤退する。この間も空爆は止まなかった。ワシントン・ポスト紙によると、旅団を率いるデニス・クリオ大佐は3月下旬、自身が乗った「車両を消し去る」ほどの攻撃を受け、重傷を負ったという。

同紙が確認した医療記録によると、クリオ大佐は「頭蓋脳損傷」と診断され、吐き気、嘔吐おうと、記憶喪失、そして一時的な方向感覚の喪失など、深刻な症状を呈していた模様だ。

北極圏から穀倉地帯に駆り出され…

ワシントン・ポスト紙は、クリオ大佐が退院後、別部隊に異動になったとしている。一方、米インサイダー誌はウクライナのキーウ・ポスト紙による報道をもとに、大佐が死亡した可能性もあると報じている。

このほかワシントン・ポスト紙によると、侵攻初日にして数十人の兵士が死傷した。兵士たちはほかのロシア部隊と同様、訓練だと偽って現地に送られた可能性がありそうだ。記事によると兵士たちは、侵攻当日の午前3時になって「銃撃が実施される」と初めて告げられたという。