コロナ禍により、経済的困窮に陥った寺が破綻し、空き寺になってしまう無住寺院問題が深刻化している。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「廃虚となった寺院はYouTuberや海外ブローカー、反社的集団の格好の標的になる恐れがある。こうした問題を重視した国は、今秋、12万平方メートルという広大な境内地を持つ島根県の空き寺を国有化した」という――。
国有化の手続きが進む金皇寺。本堂(左)と庫裏(右)は解体せず国庫に帰属させる=島根県大田市で2020年12月2日午後2時36分、目野創撮影
写真=毎日新聞社/アフロ
国有化の手続きが進む金皇寺。本堂(左)と庫裏(右)は解体せず国庫に帰属させる=島根県大田市で2020年12月2日午後2時36分、目野創撮影

この1年の仏教界は激動であった。

新型コロナウイルスの感染拡大が長引いた影響で、特に京都や奈良、鎌倉などの拝観寺院における収入は大きく減少したとみられている。オミクロン株の感染が広がれば、来年2022年も引き続き、多難な状況が続きそうだ。寺院環境の悪化は、つまるところ「空き寺」の増加につながる。その一方で、深刻化する空き寺・空き神社問題に一石を投じる「宗教法人の国有化」という大きなエポックが、今年秋に実現していた。

地元のお寺がなくなると困るのは…

経済的困窮に陥った寺が破綻し、空き寺になってしまう無住寺院問題が深刻である。現在、国内にはおよそ7万7000の寺院がある。そのうち、無住寺院は1万7000カ寺ほどと推測できる。私は2040年までには、さらに1万カ寺ほどが空き寺になる可能性があると指摘し続けている。

無住寺院の大半は、地域の同門寺院(同じ宗派に属する寺)が「兼務」していくことになる。だが、空き寺の維持・管理には多額の資金が必要になる。定期的な伽藍がらんの修繕、日頃の草刈り、清掃などの人件費などはバカにならない。

1つの寺院が複数の空き寺を兼務していくような状況になれば、多額の負債を背負うことにもなり、共倒れする危険がある。

今後、管理されずに放置される寺院が続出していくことが考えられる。そうした宗教法人は解散することがひとつの手段ではあるが、手続きが煩雑で費用もかかる。

寺院や神社の役員や檀家・氏子も存在せず、宗教法人の解散手続きが困難になっている状態を「不活動宗教法人」という。不活動宗教法人の調査はあまり進んでいない。だが、国内には3500施設(不活動神社を含む)ほど存在するとみられる。私の所属する浄土宗では約7000カ寺の末寺を抱えており、不活動法人(長期にわたる無住寺院)は比較的少ないが、80カ寺ほどはある。

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