現在、日本国内の仏教には156もの宗派(包括宗教法人、仏教系新宗教を含む)が存在する。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「小規模な宗派や一部の仏教系新宗教は、消滅の危機に瀕している。特に、地方都市に末寺が多く分布する宗派は将来的に存続が危ぶまれ、他の宗派などに“合併・吸収”される可能性もある」という――。
2015年11月30日の清水寺
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少子化社会で確実に到来する「仏教宗派の淘汰」

仏教教団(宗派)が淘汰の時代を迎えている。

日本の仏教は曹洞宗や浄土宗、日蓮宗といった宗派ごとに分かれているが、小規模な宗派や一部の仏教系新宗教は、消滅の危機に瀕している。日本の仏教宗派の現状と、未来予測をしてみたい。

日本の仏教は1500年の歴史の中で、多数のセクトに分かれてきた。仏教教団勢力の流れを説明するとかなりややこしいことになるので、ここではごく簡単に説明する。

宗派のはじまりは、鎮護国家を目的とした南都六宗(三論、成実、倶舎、法相、華厳、律)といわれている。南都六宗は学問研究が主であり、衆生救済が目的ではなかった。そのため、次第に衰退していった。現在では法相宗、律宗、華厳宗の3宗しか残っていない。

平安時代には遣唐使をつとめた最澄が天台宗を、空海が真言宗を開き、現在の宗派の基盤をつくった。奈良時代に登場した役行者がはじめた修験道が各地で信仰されるようになったのも、この頃である。

鎌倉時代になって比叡山で学んだ法然が浄土宗を、その弟子の親鸞が浄土真宗、日蓮が日蓮宗を開宗し、入宋した栄西が臨済宗、道元が曹洞宗を伝えた。教科書にも載っている、いわゆる「鎌倉新仏教」である。これらの伝統仏教教団は江戸時代に入ると、ほぼ分派の動きが止まる。

明治時代に入って、信教の自由が発せられると宗派再編が活発化する。1939(昭和14)年に宗教団体法が発足するまで、13宗56派が存在した。たとえば臨済宗は天龍寺派や相国寺派、建仁寺派など14派に分かれていた。

だが、戦時下での宗教統制を目的とした宗教団体法が施行されると、基本的には「1宗祖1宗派」となり(浄土真宗など一部例外の教団はあった)、計28宗派に統合される。

戦後は憲法の定める「信教の自由」によって、再び多くの包括宗教法人が誕生していく。戦後間もない頃の新宗教教団の乱立の様子は、「神々のラッシュアワー」と呼ばれた。現在156もの仏教宗派(包括宗教法人、仏教系新宗教を含む)が存在している。

ちなみに、「新宗教」とは、幕末以降に成立した宗教勢力を指す。仏教系では、宗教団体法以前の13宗56派を「伝統仏教教団」とし、それ以外の新興勢力を「新宗教」と位置付けることが多い。

あえて教団名を挙げないが、一見、伝統仏教教団風の宗派名を掲げて社会的な信用があるように見せつつ、強引な入信勧誘や霊感商法を行っている仏教系新宗教もあるので注意してもらいたい。