奈良の法隆寺も、京都の清水寺も、じつはマイナーな宗派だった

伝統仏教教団のうち、最大の宗派が曹洞宗だ。末寺1万4593カ寺を抱える。次いで、浄土真宗本願寺派が1万250カ寺。さらに真宗大谷派が8624カ寺、浄土宗7008カ寺、日蓮宗5138カ寺と続く。多くの教団を生み、「日本仏教の母山」として知られる天台宗は3323カ寺にとどまっている。

ちなみに著名な寺院でいえば、聖徳太子がひらいた奈良の法隆寺は聖徳宗というマイナーな宗派だ。戦後の「神々のラッシュアワー」の時代に、法相宗から独立した。聖徳宗傘下の寺院は24カ寺しかない。

法隆寺の宗派は聖徳宗だ
撮影=鵜飼秀徳
法隆寺の宗派は聖徳宗だ

京都の観光名所、清水寺も戦後、法相宗から1965(昭和40)年に独立し、北法相宗を名乗った。包括する寺院はわずか8カ寺だ。清水寺は日本でも最も古い宗派の一群、南都六宗を起源にもつとはいえ、実は新しい包括宗教法人傘下なのだ。

清水寺は法相宗から分派した
撮影=鵜飼秀徳
清水寺は法相宗から分派した

さらに大仏で知られる東大寺は南都六宗のひとつ華厳宗を受け継いでいる。同宗は108カ寺である。

鑑真がひらいた唐招提寺を総本山にもつ律宗は、現在28カ寺にすぎない。唐招提寺の知名度は高いが、教団の規模はかなり小規模である。

こうした小規模教団のうち、地方都市に末寺が多く分布している教団は将来的に存続が危ぶまれる。

なぜなら、過疎化によって寺院が護持できなくなり、空き寺が増えることが予想されるからだ。数千カ寺もの末寺を抱える大教団傘下の寺院であれば、仮に無住(住職不在)化したとしても近隣の同門寺院の住職が兼務し、護持することは可能になる。

だが、空き寺を兼務する同門寺院が近隣にない小規模教団の場合、「空き寺=廃寺」となる可能性がある。

地方の人口減少が加速すれば、無住寺院(空き寺)が増えるのは必然。私は2040年には現在の全国7万7000カ寺が5万カ寺ほどに減少する可能性があると、指摘し続けている。

こうして小規模教団は勢力をどんどん失っていく。ある時点で、浄土系なら大手の浄土宗や浄土真宗本願寺派など、密教系なら真言宗などに、臨済系なら最大派閥の臨済宗妙心寺派などに「合併・吸収」されていくであろう。

伝統仏教教団で将来的にも安泰なのは曹洞宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、浄土宗、日蓮宗、高野山真言宗、臨済宗妙心寺派、天台宗、真言宗智山派、真言宗豊山派の10宗派くらいだろうか。とはいえ、特に曹洞宗や高野山真言宗は過疎地に多くの末寺を抱えており、勢力の減退は否めない。