文化庁『宗教年鑑』の最新(令和3年)版によれば、伝統宗教も新宗教も年々施設の数や信者数が減っている。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「そうした中でどの宗教教団にも属さない“単立宗教法人”が増えている。元は大きな組織の宗教法人に属してしていたが、経営方針や人事、お金などを巡る対立やトラブルにより、独立する寺社が続出している」という――。

日本を映し出す鏡「宗教」が大変なことになっているのをご存じか

毎年この時期になると、宗教学者らの元に1冊の報告書が送られてくる。文化庁が発行する『宗教年鑑』である。宗教法人を所轄する文化庁では、宗教法人の数や教師(僧侶などの宗教者)の数、信者数などを12月に取りまとめている。その統計が報告されるのだ。宗教の動態は、日本を映し出す鏡。最新の『宗教年鑑 令和3年版』で興味深いデータが示されたので解説したい。

まず宗教法人の数の変化について。宗教法人とは、大きく2つの種類に分けられる。包括宗教法人と被包括宗教法人である。

宗教法人の包括・被包括の関係
文化庁「宗教年鑑」を参考に作成

仏教でいえば包括宗教法人は真言宗、天台宗といった「宗門」に該当し、被包括宗教法人はその宗門の看板を掲げる「寺院(末寺)」にあたる。神道では、全国7万9000もの神社を包括する神社本庁が包括宗教法人にあたる。

他にも包括宗教法人に所属せずに単独で活動する単立宗教法人がある。

『宗教年鑑 令和3年版』によれば、被包括宗教法人の総数は17万2957法人。前回(令和元年12月)調査よりも335法人減った。

宗教別の内訳でみると前回、仏教系では7万6970カ寺(法人)あったが7万6887カ寺(マイナス83カ寺)に減った。神道系では8万4546社が、8万4444社(マイナス102社)に減少。キリスト教系は4722カ所の教会が4747か所(プラス25カ所)、そのほかの宗教(諸教)は1万4195施設が1万4069施設(マイナス126施設)となっている。

つまり、仏教系・神道系・新宗教系の施設が減少傾向にあり、キリスト教の教会は増えつつあるのだ。近年、この傾向が続いている。

仏教寺院は2年前と比べて83カ寺減少した。それは全体の0.1%に過ぎない。統計上は大した減少率にはみえないが、実態はさにあらず。あくまでも、83カ寺の減少というのは、宗教法人を「解散」した数を意味している。

宗教法人の解散は大変、煩雑な手続きになる。宗教法人解散の実例は、2021年12月22日の本コラム『「YouTuberに荒らされる」廃墟寺が海外ブローカー、反社の“餌食”になる日』で紹介した。

そのため、多くは「空き寺(空き神社)」のまま放置される。つまり、「寺院消滅」「神社消滅」の実態は数字以上に深刻、ということが考えられる。