葬儀や法事の際に発生する「お布施」の額に関する本音を調べると、払う側ともらう側に5万~10万円のギャップがあることがわかった。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「お布施に安さを求める意向がある一方、院号・居士・大姉といった戒名を獲得して“死後ステータス”を望む人もいます。そうしたニーズに乗じた僧侶側が特定の戒名を遺族側に押しつけて“販売”するケースもある」という――。
僧侶に感謝の封筒を渡す
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ネット社会で「相場がよく分からない、布施金額教えて」の声多数

人々の「お布施」に対するコスト意識が高まっている。

葬儀や法事の際に発生するお布施の相場感は、かつては地域社会(ムラ)や親族間(イエ)による「暗黙知」で決まっていた。だが、「個の社会化」が進むと同時に、さまざまなネット情報が氾濫。寺に対して「相場がよく分からない」「布施金額を教えてほしい」などと困惑の声を上げる人は少なくない。なかには布施をめぐって菩提寺とトラブルが生じるケースも起きている。

お布施のあり方が過渡期にある。そこで私が参加する仏教セミナー「Zoom安居(あんご)」では、この度、「お布施」に関する意識調査を実施した。アンケートは僧侶・一般人の両面で行った。お布施に特化した意識調査は、過去に例があまりない。アンケートからは、僧侶側と一般人との意識の乖離がみられた。有効回答数は僧侶が203人、一般人が208人だった。

最初に、「お布施の金額を明示」することの是非についてのアンケート結果を紹介する。

先に「布施とは何か」を説明したい。布施は仏道修行においてなされる無欲の実践をさす。金銭だけではなく、衣服や食事などを僧侶に施すことも含まれる。

一方で、僧侶は「施しを受ける」だけではなく、人々に「布施」をしなければならない。それは儀式を行い、仏法を説き、不安を取り除くということ。あくまでも布施は「対価」ではない。僧侶と人々による双方向の「喜捨(喜んで差し出す)」であることが大前提だ。

従って、「お布施の金額を明示することに賛成か」という設問自体が、仏教でいう布施の教えから逸脱している。繰り返すが、布施は「サービスの対価」でないからだ。だが、今回はそれを承知の上で、現代日本の「葬送の慣習と実態」に添って質問を作成したことをお断りしておきたい。

前置きが長くなったが、さっそくアンケート結果をみてみよう。