「葬式一式(枕経、通夜、葬儀、戒名)のお布施はいくらが妥当か

では、日本におけるお寺への布施相場はどれほどなのか。興味深いアンケート結果が出た。まずは、実態から紹介する。

◇設問「あなたが過去に受け取った葬式一式(枕経、通夜、葬儀、戒名)のお布施平均額はどれくらいですか(感覚値で)」
【僧侶向けアンケート】
5万~10万円未満 ――6.9%
10万~15万円未満  ――3.4%
15万~20万円未満 ――19.2%
20万30万円未満  ――33%
30万~40万円未満  ――17.2%
40万~50万円未満  ――10.8%
50万~100万円未満 ――7.9%
100万円以上  ――1.5%

※太字がコア層

回答にバラつきがあるのは、布施の相場感は地域(あるいは僧侶、宗派)によって大きく異なるからである。

たとえば沖縄県では葬式一式の布施額は5万~8万円と全国で最も低い水準だ。山陰地方もアンケートの回答項目の「5万~10万円」に該当する範囲内である。

他方、東京都では沖縄の5~10倍か、あるいはそれ以上の水準である。布施の金額を多くもらっている都市部の僧侶は堕落し、地方の僧侶が清貧、いうことでは決してない。

しかしながら布施の平均額が「50万円以上」が、およそ1割を占めているのが驚きである。さすがに、世間一般の金銭感覚からは逸脱した額であろう。本当に檀信徒の理解は得られているのだろうか。

では、僧侶と一般人の金銭感覚の差異についてみていきたい。布施を受ける側と渡す側の「尺度=金銭感覚」が同等であれば、問題は生じにくいはずである。

日本の葬儀
写真=iStock.com/Yuuji
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◇設問「葬式一式(枕経、通夜、葬儀、戒名)のお布施はいくらが妥当と思いますか」
【僧侶向けアンケート】
5万~10万円未満 ――3.4%
10万~15万円未満  ――5.9%
15万~20万円未満  ――12.8%
20万30万円未満 ――32%
30万~40万円未満  ――10.3%
40万~50万円未満 ――7.9%
50万~100万円未満 ――6.9%
100万円以上 ――0%
そのほか ――20.8%
【一般向けアンケート】
5万円未満  ――10.1%
5万10万円未満 ――18.7%
10万~15万円未満 ――12.5%
15万20万円未満 ――15.4%
20万~30万円未満 ――14.9%
30万~40万円未満 ――6.3%
40万~50万円未満 ――3.8%
50万~100万円未満 ――3.8%
100万円以上 ――0.5%
そのほか ――14%

※太字がコア層

僧侶が妥当と考える布施金額で、分布域が最も大きいのが20万~30万円。他方、払う側は僧侶が望むこの額よりも5~10万円低い金額が妥当と考えている。葬儀の布施の妥当額を「30万円以上」と考える割合が、僧侶が25.1%だったのに対し、一般人は14.4%。かなりの開きがある。この意識の乖離が、寺檀間のトラブルを発生させている要因になっている可能性がある。

本調査で、ある僧侶は、「私の寺の場合、葬儀は年間平均15件前後です。お寺の会計決算が赤字にならない1件当たりの額は30万円。そういう意味で当寺の場合は30万以上が妥当と思います」と回答した。