ウクライナへ侵攻したロシアに向けて国内の宗教界から抗議声明が出されている。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「広島の臨済宗佛通寺派はプーチン大統領宛てに『広島、長崎に続く第三の戦争被爆地を生むことは絶対にあってはなりません』と強い言葉で断罪。また、ネット上で戦争の恐怖と不安にさいなまれているといった投稿に回答する僧侶もいる」という――。
ウクライナカラーの大地にロシア国旗をつけた戦車が列をなし
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宗教界から抗議声明もプーチン政権に近いロシア正教会は沈黙

ロシアによるウクライナ侵攻は宗教界にも大きな衝撃を与え、ロシアに向けて抗議声明を出す国内の教団が出てきている。ただ、通りいっぺんの言葉に終始している感は否めない。

果たして宗教は戦争にたいして無力なのか。日本国内では、不安に駆られ、僧侶に救いを求める人々が出てきている。そこに寄り添う僧侶が現れ始めたのも事実だ。

ロシアが軍事侵攻した2月24日以降、少しずつではあるが日本の宗教界で動きがみられた。翌25日には、日蓮宗とカトリック中央協議会が声明文を出している。

仏教界では日蓮宗がいち早く、反応した。宗派の行政機構のトップである宗務総長による抗議声明である。

「我々、日本仏教教団である日蓮宗は、此の度のロシア連邦によるウクライナ領域内への侵攻を強く非難致します。如何なる政治的理由があろうとも、武力的解決は容認されるものではありません。あらゆる戦争行為に反対する意思を示し、平和的対話によって此の度の侵攻が即時終結されることを強く要請すると共に、世界の恒久平和を祈るものであります」(一部)

日蓮宗は、宗祖日蓮が唱えた「立正安国(正しい教えを立てることで、国家の安寧がもたらされる)」の精神を大切にする。そのため、他の仏教宗派に比べ、常に社会の動向には敏感に反応してきた。声明文は無難な内容に留まっているが、多くの仏教教団の中で先駆けて声明を出したことは評価できる。

より強い言葉でロシアの武力侵攻を非難したのが、カトリックだった。カトリック中央協議会は次のように声明を出した。

「パンデミックや気候変動など、人類が一致して解決せねばならない深刻な問題に直面している21世紀のいま、軍事力の行使などもってのほかです。いますぐ戦争をやめよと声をあげましょう。また、特に世界中の政府関係機関の方々に呼びかけます。軍事同盟による戦争抑止の考えを捨て、対話による平和構築への最大限の努力をして下さい」

ローマではフランシスコ教皇が、「灰の水曜日」(復活祭から46日前の水曜日のこと)にあたる3月2日に、ウクライナの平和のために断食と祈りを捧げることを呼びかけ、日本でも多くの信者が参加した。

一方で、ロシア正教など東方におけるキリスト教教派・正教会のひとつ、日本正教会の反応はどうか。日本正教会の教会としては、東京・神田にあるニコライ堂(東京復活大聖堂)がよく知られている。

日本正教会は3月6日の執筆時点ではコメントを発表せず、沈黙を守っている。ロシア正教会はプーチン政権とも近い存在ともされている(参照記事:本コラム「『ワクチン接種を拒む人は罪人で社会の迷惑もの』そう訴える人の言い分」2021年9月14日配信)。ロシアもウクライナも正教会が主たる宗教だ。それだけに「プーチンの戦争」への非難ができない実情があると推測できる。