副反応がこわい、などの理由で新型コロナのワクチン接種を避ける人は少なくない。それは他国でも同じ。接種開始が早かった米国の接種率は伸び悩み、9月上旬で53%。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「背景にあるのは、キリスト教福音派の一部の強硬に接種を反対する人の存在。逆に、接種率27%のロシアではロシア正教会が接種しない人は罪人であり、社会の迷惑ものだと訴えている」という――。
予防接種
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宗教団体がワクチン接種を打て・打つなというそれぞれの言い分

新型コロナウイルスのワクチン接種をするかしないか。

それは最終的には個人の判断にゆだねられるべきことだが、今、海外で宗教団体や宗教者の発言が、ワクチン接種に影響力を持ち始めている。米国では、ワクチン接種比率が伸び悩んでいるが、その背景のひとつにキリスト教福音派の中に反ワクチンを唱える牧師や信者がいるからと言われている。

一方、ロシアではロシア正教会が「ワクチンを拒否する者は、生涯かけて償わなければならない罪人になる」と市民に呼びかけ、物議を醸している。では、日本の仏教はワクチン接種をどう考えているのか。宗教とワクチンの悩ましい関係について触れてみる。

米国のワクチン接種事情のウラにキリスト教福音派

米国はファイザーやモデルナのお膝元で、世界に冠たるワクチン先進国だ。だが、ワクチン接種が国民の半数に及んだ今年春以降、接種率は鈍化し始めた。現在、米国のワクチン接種終了率は53%(9月8日現在)。バイデン大統領は70%の接種率を目指しているが、実現できるかどうか不透明な情勢だ。

実は自国で承認されたワクチンを持たず、「ワクチン不足」と騒がれた日本の接種終了率は50%(同)で、近く米国を抜かすことは間違いなさそうだ。

米国のワクチン接種が行き詰まっている理由のひとつに、キリスト教福音派の一部に強硬に接種を反対する人々がいるからだといわれている。

福音派はプロテスタントの非主流派で、全米の人口の4分の1を占めている。宗教と国民生活の関係を調べている公共宗教研究所(PRRI)と非営利団体インターフェイス・ユース・コアが今夏に行った調査によれば、白人福音派の中でのワクチン拒否率は24%であったという。

福音派は大統領選挙にも大きな影響を与え、トランプ前大統領の支持基盤としても知られている。聖書の教えに忠実で、人口妊娠中絶や同性婚など世俗化の流れには抵抗の姿勢を示す保守派である。

福音派の一部には進化論を信じず、「血を汚すから」という宗教上の理由でワクチン接種拒否を貫き、科学的なエビデンスに耳を傾けない人も少なくない。もちろん宗教上の理由だけではない。福音派のうち75%がバイデン大統領(カトリック信者)を「支持しない」としており、政治的な理由でワクチン接種を拒否する者も多い。

福音派の一部の牧師がワクチン接種拒否を呼びかけるなどしており、バイデン政権の頭痛の種となっている。