お盆の入りに迎え火を焚いて故人を迎え、送り火であの世へと戻ってもらう……お盆は日本に欠かせない夏の年中行事だ。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「あまり知られていませんが、霊魂の存在に関して日本の伝統仏教界において捉え方がまちまちです。その存在を否定する宗派は意外に多い」。7つの宗教法人に対して送った霊魂の存在の認否に関する「質問状」への回答で書かれていた内容とは――。
お盆
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霊魂の存在を否定する仏教の宗派は多い

ご先祖様の精霊を迎えるお盆は、首都圏では先月終わったが、全国的には8月中旬である。お盆の入り(13日)には迎え火を焚いて故人を迎え、16日には送り火であの世へと戻ってもらう。

迎え火はあまり馴染みがないかもしれないが、墓地や自宅の庭先でささやかに実施する人も少なくない。

一方で、送り火のほうは、例年16日夜に実施される「京都・五山の送り火」が特に有名だ。コロナ禍で見物客が集まるのを考慮し、昨年および今年は点火の数を減らして実施される。

京都・五山の送り火の鳥居型(本来は鳥居型だが、2020年は「点」だけだった)
撮影=鵜飼秀徳
京都・五山の送り火の鳥居型(本来は鳥居型だが、2020年は「点」だけだった)

このようにお盆は、死者の魂が可視化される時期である。各家庭でも仏壇に精霊棚を受けて、キュウリで「馬」を象り、ナスで「牛」をつくって祀る。これはご先祖様の精霊がなるべく早くこの世に戻るようにと、足の速い馬を、また、あの世に帰る時は名残惜しんでゆっくり戻ってもらうように、との願いを込めているからである。

さて、お盆は日本仏教共通の年中行事であり、弔いの主体は「精霊(霊魂)」である。実は、この「霊魂」、日本の伝統仏教界において捉え方がまちまちなのである。霊魂の存在を否定する宗派は意外に多い。お寺は先祖供養の場でもあるので、霊魂を否定していることに違和感を抱く人もいるかもしれない。