古都・京都市が数年後に企業の倒産と同様の「財政再生団体」に陥る可能性がある。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「財政悪化の原因は、市役所を159億円もかけて改修するなど市政の放漫借金。市民から、寺院や神社から税金を徴収するべきとの声もあるが、景観をよりよくするため街中の無電柱化を進めるなど地域の付加価値を上げる取り組みを急ぐべきではないか」という――。
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“倒産危機”の京都市、借金の総額は8600億円

古都・京都市が財政破綻の危機にある。このままでは2028(令和10)年度にも、企業の倒産と同様の「財政再生団体」に陥る可能性がある。そんななか、「寺院や神社から税金を徴収するべき」との声が市民から上がり始めた。

京都市では、37年前に「古都税」と呼ばれる拝観料への課税を巡って、行政と仏教界が激しく対立。京都の政治・経済が大混乱した。古都税紛争が再燃することはあるのか――。

人口147万人の京都市が財政再生団体転落への可能性を明らかにしたのは、昨春のこと。借金の総額は8600億円にも及んでいる。財政悪化の背景には、市政の放漫がある。地下鉄東西線の建設やさまざまな公共事業がバブル期と重なって、予想以上に膨み、その建設費を多額の市債で賄おうとした結果、毎年の返済負担がのしかかってきていること。さらに、交通機関の敬老パスや子育て支援などの独自の事業を、身の丈に合わない状況の中で継続してきたことなど、さまざまである。失政と言わざるを得ない。

市は2025年度まででおよそ1600億円の収支改善を実施することを表明した。3月25日には、9204億円規模の来年度予算案が可決。二条城や動物園などの施設の値上げや、70歳以上の高齢者に交付している公共交通の敬老パスの条件を厳しくしたりするなど、行財政改革を進めている。だが、まだまだ不十分なのが実情である。

にもかかわらず、昨年秋には京都市役所の改修工事が終了し、その華美なしつらいに批判が集まった。京都市役所は工期4年、予算159億円をかけて耐震、バリアフリー化などの改修工事を実施。市役所は1927(昭和2)年に建てられた歴史的建造物である。

ところが、地下鉄から直接市庁舎につながる地下道が造られたり、昭和の建設当時の「正庁の間」の復元にあたって壁面に高価な「緞子張り」を施されたり、エントランスや議場にはステンドグラスがはめこまれたり、来賓用の茶室まで設置されたり……。京都市内には、来賓をもてなせる茶室などは山ほどあり、市役所内に造る必要は全くない。財政再生団体転落の危機の渦中にある市役所とは思えない贅沢なしつらいに、市民からの批判が高まっている。