京都の無電柱化は東京23区よりも遅れている
京都市の財政悪化は、国際的観光都市としての競争力を失墜させる危険性がある。京都市は景観整備など、街の価値を高める施策を打ってきた。
たとえば、電柱をなくして景観をよくする「無電柱化事業」を1986(昭和61)年から進めている。すでに京都のメインストリートである四条通や河原町通、観光地にある清水寺の産寧坂、嵯峨の鳥居本、お茶屋街の祇園花見小路や上七軒通など111路線、約62kmで整備を完了(計6期)している。寺社仏閣が伝統的景観を造る京都にあって、電柱や電線のない街づくりは、京都の人々にとって悲願である。
京都市は第7期計画として2019(平成31)年以降、およそ10年、約90億円をかけて、金閣寺や銀閣寺に通じる市道・府道や嵐山に通じる府道計10.1kmの無電柱化に着工する予定であった。ところが、財政再生団体に転落する恐れがあるとして、計画は白紙に戻されてしまった。
無電柱化率はパリやロンドンが100%、ニューヨークが84%などに比べ、日本は立ち遅れている。しかも、京都市に限っていえば東京23区や大阪市よりも低い2%となっている。
コロナ収束後のインバウンド需要回復を狙う京都にとって、無電柱化の計画中断は痛恨だ。景観の維持にはコストがかかる。財政難が原因で景観が毀損されてしまうと国際的な競争力を失いかねず、観光需要にも影響する。悪循環に入っている。世界遺産・京都の存在感が損なわれることは、すなわち日本のブランド力低下を意味し、訪日外国人観光客の減少にもつながる。そうなれば、話は京都だけでなく、東京や2025年に万博を開催する大阪や奈良、広島といった観光地の地盤沈下も招きかねない。
兎にも角にも財源が必要だ。京都市では昨年、向こう5年間にわたる行財政改革計画をとりまとめるにあたって、パブリックコメント(市民意見の募集)を実施した。市民からはおよそ9000件の意見が寄せられ、危機感の高さを窺わせた。
京都市はその内訳を公表。保育園や保育・学童費など、子育て支援に関する意見が最も多かった。他にも市役所のスリム化や人件費の削減を求める意見や、「洛中への自動車乗り入れに料金を取ることはどうか」「北陸新幹線延伸計画を中止すべき」「地下鉄は民営化すべき」などの具体的な案も寄せられた。