本の内容を、簡潔に、面白く話せる人は、どこが違うのか。文芸評論家の三宅香帆さんは「5つのポイントがあります」という。YouTubeで「書評番組」を手掛ける竹下隆一郎さんとの対談をお届けしよう──。

読み方が上手くなれば話をするのも上手くなる

【竹下】三宅さんって、「話のターン」が極めて長いですよね。インタビューのときハッとしました。

【三宅】えっ、どういうことですか。

【竹下】例えば私が、「いま読んでいる本について教えてください」と質問したとします。そうすると三宅さんは、聞いている人を3分ずっと興味を惹きつけ続けながら答えてくれるんです。発言するターンの時間が長くても、面白いから相手を飽きさせない。30秒でダレてしまう人も多い中で、すごいです。

【三宅】動画メディアに携わる竹下さんならではの視点ですね。

【竹下】なぜ長いターンで話せるのか。本を読むからだ、と確信しています。ひとつのテーマについて、長大でありながらも緩急をつけて、緻密に展開していくのが本です。本を読むと、1冊を読み切る持久力と、複雑な内容を理解する構成力が養われます。この良質なインプットが高度なアウトプットに繋がる。「簡潔に話せ」と短い言葉が重視される昨今ですが、自分のターンが来たときに、30秒で終わらせず、3分話し続けられる能力のある人のほうが、ビジネスでも有利ではないでしょうか。

【三宅】確かに。私はエピソードを記憶して披露するのが苦手なんですが、5つの視点を持ちながら本を読むと、面白い話ができるようになると思っていて。5つの視点とは、比較、抽象、発見、流行、不易、です。

【図表】話が面白い人は5つの手法で本を読む

【竹下】ご著書『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』(新潮新書)で紹介されていましたよね。拝読しました。

【三宅】ありがとうございます。映画も大ヒットした吉田修一さんの小説『国宝』(朝日新聞出版)を例に説明しましょう。まず、一番簡単な方法が、「比較」です。なんでもいいので、何かと比べる。国宝は歌舞伎がテーマですから、私は、同じ伝統芸能である落語を扱った、雲田はるこ先生の『昭和元禄落語心中』(講談社)と比べてみました。2つ目は、「抽象」。つまり、テーマを見つけるということです。物語の初めと終わりで何が変わったかに注目するといいですよ。

【竹下】誰もが知っている『桃太郎』は、例えばどう抽象化できますか。

【三宅】『桃太郎』はようするに、「鬼がいて、退治しに行って、いなくなった」という話ですよね。日本であれば、「災害がやってきて、災害が収まった」という、一段階大きい話が真のテーマだ、という解釈が可能です。