2024年、日本の映画界に光が差した。衰退する一方だった時代劇の復活である。米国では配信ドラマ『SHOGUN 将軍』が大ブレイク。エミー賞主要部門を総なめにした。プロデューサーと主演を務めたのは真田広之だ。日本では自主制作映画『侍タイムスリッパー』がヒットした。安田淳一監督が資金捻出から脚本、撮影、編集までを担うSFと時代劇とコメディを融合させた画期的な作品だ。「いずれも東映が関わる」と分析したのが『東映の仁義なき戦い』の筆者の野地である。自社で撮影所を2つ所有し、時代劇に特化したスタッフを今もたくさん抱えている東映の人的資産がハリウッドでの成功に繋がり、京都撮影所が物心両面で応援したのが『侍タイムスリッパー』だった。

『東映の仁義なき戦い 吹けよ風、呼べよ嵐』『経営者のための正しい多角化論 世界が評価するコングロマリットプレミアム』
『東映の仁義なき戦い 吹けよ風、呼べよ嵐』●野地秩嘉 著●プレジデント社 ●本体価格2,000円+税
『経営者のための正しい多角化論 世界が評価するコングロマリットプレミアム』●松岡真宏 著 ●日本経済新聞出版 ●本体価格2,400円+税

今や半導体よりも大きい日本の一大産業、アニメを育てたのも東映だった。初代社長の大川博が1950年代「ディズニーのように世界に通用する東映アニメを作る」と東映動画を設立。宮﨑駿、高畑勲のジブリコンビも在籍し、「少年ジャンプ」など漫画誌と組み、今も昔も数多くの作品を世に出している。

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