初めての国にでかけて、「ああちがう国に来た」と実感するのは、見知らぬ文字の並んだ看板の群れを見るときだ。だがしばらく滞在するうちに、少しずつその変な図形の一部が、意味と音をもってくる(「ビール」とか、「タクシー」とか地名とか)。そのわかるものとわからないものの混在した状態が、外国風景の一つの醍醐味だったりする。

『絶滅しそうな世界の文字』ティム・ブルックス著 黒輪篤嗣訳 河出書房新社/4900円+税
絶滅しそうな世界の文字』ティム・ブルックス著 黒輪篤嗣訳 河出書房新社/4900円+税

本書は、その醍醐味が詰まった本だ。次々に登場する、見たこともない文字。そして、それにまつわる数奇なお話の数々。その文字を眺めているだけで不思議な感覚に陥る。

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