2022年の登場以来、たった3年――。世界は、生成AIの組成したコンテンツで溢れている。テキスト、画像、映像、音声、漫画にアニメ。もはやどれがAI製か否か、見たり聞いたりしただけでは判断できないほどだ。

そこで改めて、加工されていない、本当の一次情報が重要となる。人間が冒険者となって集めてきた写真、映像、記録。AIを介さない「生のコンテンツ」。どこにあるのか。

国勢調査をはじめとする政府や自治体や企業が地道に集計し公表するオープンデータだ。数字の集積だからこそ、人の安易なナラティブやAIの怪しげな断言に惑わされず、「真実」を探せる。

『データでわかる東京格差』『蟻客 アリと共に生きる虫たち』
『データでわかる東京格差』にゃんこそば著 SB新書/1050円+税
『蟻客 アリと共に生きる虫たち』小松 貴、島田 拓、丸山宗利著 KADOKAWA/5500円+税

ネットで人気のデータ可視化職人にゃんこそばは、『データでわかる東京格差』で公式統計を地図にプロットし、複数のデータを重ねて東京をはじめ日本のリアルを可視化する。ぼんやりと「東京」とイメージされる首都圏も地域によって多様な顔を持つ。コンビニやマクドナルド店舗の駐車場の有無を示した地図は、鉄道社会と自動車社会の分水嶺を示す。金持ちの分布、中学受験の比率、子供の多さなど、さまざまなデータで街のポテンシャルがわかる。

政府や自治体や企業が集めてきた加工されていないファクトの何と何を組み合わせれば「真実」が見つかるか。本書は、一次情報の読み解き方指南としても一級だ。

一次情報といえば、フィールドワークの最前線。著名な昆虫研究者3人が15年以上かけた凄まじい調査の集大成が『蟻客』だ。

地上を制したのが人間ならば、地表と地下とを制したのはアリかもしれない。巨大都市を人類より遥か昔からつくり上げてきたアリ。その社会に「食客」として依存し、アリなしでは生きていけない生物がいる。好蟻性生物とも呼ばれる「蟻客」だ。世界で1万種以上が発見されているが、その生態の多くが謎に包まれていた。著者3人は中南米、アフリカ、東南アジア・オセアニア、ユーラシアそして日本のさまざまなアリの巣に潜り込み、300種以上の「客」の生態を明かす。

驚くのは写真のクオリティだ。数ミリから数センチのアリと蟻客の関係を柔らかいライティングで、美しく生き生きと捉えていく。

アリの巣は街だ。農場から食糧庫、産院、保育園、死体置き場まで。住まう蟻客の顔ぶれは、甲虫の仲間ハネカクシが目立つが、ゴキブリ、ハエ、アブ、チョウ、コガネムシ、カナブンにクワガタまで。アリから餌をもらったり奪ったり、種によってはアリを食べて暮らしている。

『蟻客』は生成AI時代の人間の生き方のお手本になる。好きなことを自らの手でだれよりも先に開拓する。冒険者の魂と実践こそが、身体を有した私たちの特権なのだ。

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