契約社員の正社員化を本社に直談判
Ado、藤井風、Mrs. GREENAPPLE……。当社所属のアーティストが世界を舞台に活躍し、おかげさまで会社の業績も11年連続増収と好調です。要因はいろいろとあるのですが、ひとつのきっかけは7年前の「契約社員の正社員化」だと思います。
ユニバーサルミュージック社長。1967年、東京都生まれ。91年日本大学法学部卒業後、メルシャンを経て、92年ポリドール(現ユニバーサルミュージック)に入社。2008年執行役員、12年副社長兼執行役員を経て、14年1月より現職。一般社団法人日本レコード協会副会長。
当社はもともと契約社員が約7割を占める組織でした。しかし、2018年に希望者全員を正社員化しています。それによって社員が力を発揮し、いいアーティストが来てくれて、業績も向上。業績のいい会社にはいい社員が集まり、さらにいいアーティストが来てくれる。この正のスパイラルが回り続けています。
そもそもなぜ契約社員が多かったのか。当社のルーツの一つは富士電機の子会社であるポリドールで、その時代は正社員が中心でした。
しかし、1990年代後半から2000年代初頭にかけて親会社が外資系に変わっていく過程で能力主義が導入され、制作業務を担うA&R(アーティスト・アンド・レパートリー)や宣伝のほか、営業やコーポレート部門に至るまで、ほとんどが年度ごとの契約社員となりました。
音楽の仕事をしたくてポリドールに転職してきたので、当時の私は契約社員という雇用形態を前向きにとらえていました。結果を出せなければ契約を切られるリスクはありますが、いい意味での緊張感がありました。会社に依存するつもりはなく、「30代半ばになったら独立する」と周囲に宣言していたくらいです。
ただ、いま振り返ると、本音は別のところにあった気がします。独立を口にしていたのは、「もしものときにクビになったとは言いたくない」という心理が働いたから。戦力外通告される怖さから保険もかけていました。
「藤倉くん、うちに来なよ」
当時は、そう誘ってくれる会社を少しでも増やそうと意識していましたが、それも保険の一つでしょう。目の前の仕事に全力で取り組まなくてはいけないのに、どこか逃げ道を探しながら仕事をしている――。いま振り返ると、とても不健全な働き方でした。
私だけの問題ではありません。14年に社長になってあらためて社員の声を聞くと、雇用形態に不安を抱いている社員は少なくありませんでした。契約社員を正社員化する必要があると考えた私は、16年前後からアメリカにある本社と交渉を開始しました。
最初はなかなか理解されませんでした。正社員化すれば人件費が固定費になり、業績が悪化したときに柔軟に対応できなくなります。そうなったときに危機を乗り切ることができるのか、というのです。
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