1店舗のパート社員は常時2〜3人くらい

赤ちゃんのお宮詣り衣装や出産準備品の専門店として、1956年、今も本社を置く姫路で創業した当社が本格的に多店舗展開できるようになっていったのは、90年代後半からであったと思います。標準店舗のモデルをベースに、どんどん店を出せるようになって今に至ります。直営主義で、もうすぐ国内1200店になるところです。

大村 浩一(おおむら・こういち)
大村 浩一(おおむら・こういち)
西松屋チェーン社長。2010年東京大学法学部卒業後、みずほ銀行入行。14年3月西松屋チェーン入社、19年5月取締役執行役員社長補佐室長、20年1月取締役専務執行役員社長補佐室長、同年8月から現職。

ベビー・子供用品の国内市場は、少子化が進んでいるとはいっても、年2兆円ぐらいあると見ています。その中で、当社の年商は約1860億円ですので、売上高ベースでの市場シェアは9%ほどです。このシェアはまだ小さいと思っています。仮にシェアが1%増えたら、年商で200億円の増加となり、まだ伸びしろがある。

人手不足や円安、物価高騰といった社会変化は当社の経営にも少なからず影響があります。たとえ1店舗あたりの売り上げが少なくても利益を出せるローコスト・オペレーションの取り組みを早くから徹底してきました。今は、DX、生成AIの活用も同時に進めていて、その生産性をより高めていかなければならないと考えています。ただし、デジタル化せずとも、作業をシンプルにするなど、できることは先にやらなければいけない。必要な作業は単純化し、不要な作業をなくしていくのが、いちばん最短の効率化です。1店舗あたり1万円のコスト削減でも、全店に換算すると約1200万円と大きな金額になります。まずは1店舗から現場作業を見直して効率化し、それを全体に波及させて会社として大きな効果を出していきたい。

店長は、1人で平均4〜5店舗を受け持つスーパーインテンデント制という制度を採っています。現場の1店舗で働くパート従業員の方は常時2〜3人くらいで、入社したその日から即戦力になっていただけるよう作業内容は簡単に、作業種類も減らしています。例えば、商品の発注業務一つとっても、売れ筋を把握し、将来の売れ行きの予測もするのは、ある程度の経験や習熟を必要とします。当社では発注業務を各店舗の従業員に任せるのではなく、本部の専任の担当者が一括して全店の発注をしています。

【図表】店長1人が4〜5店舗を回す驚異の省人化西松屋のオペレーションの秘密

売り場づくりにおいては、秋になれば長袖のTシャツを多く並べ、12月が近づけばクリスマスグッズのコーナーづくりをしますが、売り場の設計を現場の店舗に任せるのではなく、いちばんいい形の売り場になるよう、本部で作成した設計図が各店に届きます。パートさんはその設計図を見ることで迷うことなく最速で売り場づくりができる。

この仕組みを徹底するためにも、「現場主義」を重視しています。本部の社員も、時間を見つけては現場の店舗へ足を運ぶ。店舗での作業量と時間、人件費、そして働く人たちの負担を常に把握し、より効率化するように努めています。また、現場で問題が発見されると会社全体で共有していますので、「現場主義」は浸透できていると私は考えています。

交通の少ない場所は運転の苦手な人も気楽

「現場主義」の第一は、お客様目線で考えるということです。実際に買い物に来店されるお客様の多くは、小さいお子様を連れておられたり、ベビーカーを押したりされている。売り場の通路が特売品を積んだゴンドラで狭くなっていたり、ごちゃごちゃとした陳列で店内の見通しが悪かったりすると、お客様同士や従業員がぶつかり合ったり、親御さんの手を離したお子様が迷子になってしまったりもする。もちろん、売る側としてはたくさんの棚やワゴンを置いて、一品でも多く商品を陳列したい。しかし、お客様目線に立てば、通路は広く、すっきりとしているほうがいい。通路が広ければ、ベビーカーや大型カートを押すお客様たちが簡単にすれ違え、ストレスなくお買い物することができます。

お店の売り場、例えば、多くの種類が陳列されているベビーカー売り場では、個々の商品の使い方、折り畳んだときのサイズ、何歳くらいまでのお子さんにお使いいただけるか、といったご質問を受けることがあります。従業員教育には力を入れていて、お客様から直接ご質問を受けたりしたときに対応できるように商品知識は身につけています。しかし、お客様がご質問されるのは、そもそも売り場での説明が不足しているためと考えますので、商品のパッケージや商品ごとに付けてあるPOPなどにしっかり説明書きをして、お客様自身で商品の特徴を把握できるよう工夫しています。商品によってはそこにQRコードを印刷し、その場でスマートフォンなどで詳細をご覧いただけるようにしています。お客様は従業員に聞く手間を省け、従業員も作業を中断することが減ります。デジタル技術の活用の一例です。もちろん、お客様は何でも店の従業員にお尋ねください。いつでもウェルカムです。

出店するに当たっての立地についても、「お客様目線」を第一としています。交通量の多い幹線道路に店があると、確かに目立つでしょう。でも、実は幹線道路を1つ曲がった交通量の少ない道沿いにある店のほうがクルマの出し入れがしやすい。クルマの運転があまり得意ではないというお客様もいらっしゃるでしょうし、お子様を乗せているお客様はなおさら気を使われることでしょう。

店舗外観

また、近年はインターネット通販への比重も高まっていますね。当社としても、新規店舗出店を進めながら、私が社長補佐室長であったころよりインターネット通販事業の改革にも本格的に取り組み始めて、2021年には、自社で運営する「西松屋公式オンラインストア」をオープンしました。従来は、大手通販サイトなど、既存のプラットフォームにも出店していましたが、約1200店を直営で経営しているネットワークの強みも生かしながら自社サイトを強化し、24年からは自社サイトのみに集約して展開しています。

(構成=樽谷哲也 撮影=松田 弘(大村氏、西松屋花田店内観) 写真提供=アフロ(店舗外観))

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