競合が本格参入する前にアクセルを大きく踏んだ

大和ハウス工業というと、住宅メーカーのイメージが強いと思います。ですが、実は物流施設の開発も積極的に手がけていて、現在、棟数、開発延床面積ともに国内ナンバーワンです。物流施設は全国に351棟、延床面積は約1431万平方メートル。東京ドーム約306個分の広さになります。

デベロッパー主体ではなく、母体が住宅メーカーであることから、土地開発から設計・施工、テナントを探し誘致するリーシング、維持管理までトータルで手がけられるのが最大の強みです。このため「住宅メーカー」「ゼネコン」「デベロッパー」という3つの顔を持つ、三刀流の会社と呼ばれることもあります。

では、なぜ住宅メーカーの大和ハウス工業が物流施設でトップに立てたのか。三刀流はその理由の一つ。私が考える、そのほかの要因についても順にお話ししていきましょう。

大友 浩嗣(おおとも・ひろつぐ)
大友 浩嗣(おおとも・ひろつぐ)
大和ハウス工業社長。1959年、北海道生まれ。法政大学法学部を卒業。84年に同社に入社。埼玉支店長や名古屋支社長などを経て、取締役専務執行役員、経営戦略本部長や海外本部長などを歴任。2025年4月より現職。

当社と物流施設がすぐに結び付かない方もいるかもしれません。当社は1955年に創業、最初に手がけた商品が鉄パイプ製の倉庫「パイプハウス」でした。現在の物流施設とは形態も機能も全く異なるものの、源流はここにあるといっていいでしょう。パイプハウスを起点に次第に事業として成長し、大規模な倉庫の建設にも携わるようになっていきました。そして2004年、当社は借り入れゼロの無借金経営を達成しました。これはもちろん素晴らしいことなのですが、2000年代に入ると、機関投資家から「成長性に乏しい」と指摘されるようになりました。そこで「安定」を達成したため、次は「成長」を目指そうと投資を活発にし、事業の成長をつくっていく方向にシフトチェンジしていったのです。

次の成長分野は何か。そのとき注目したのが、物流でした。当時、物流業界は変革期に差しかかっていました。EC販売が一般消費者に浸透し始めたことで、物流のあり方が変わってきたからです。この時代、求められたのは、単に商品を保管する従来型の倉庫でなく、入荷から出荷まで一切のバックヤード業務を担う、高機能で大型の物流施設でした。それに作業者が必要になりますから、人が集まる場所でないといけません。当社は米国などの先進例を参考に、この流れを先取りし、いち早く参入を決断しました。そして02年、デベロッパーとして自社で土地を購入し、物流施設を設計・施工、特定の顧客1社に貸すという「D(ダイワハウス)プロジェクト」をスタートさせたのです。その企業のニーズに合わせてオーダーメイドの物流施設を開発する、BTS(ビルド・トゥ・スーツ)型というビジネスモデルです。

このプロジェクトへの経営判断は非常に早かった。デベロッパーとして土地を購入するというのは、大きな経営判断です。だからこそ、他社が参入を本格化する前に好立地を確保し、優位性を築けたと考えています。この決断がなかったら、おそらく今の物流施設事業はないでしょう。これが当社にとって大きなターニングポイントになりました。こうして当社は物流施設事業にアクセルを大きく踏み込んでいくことになったのです。

物流施設への本格参入時に生きたのが、住宅事業でのノウハウです。住宅事業では、土地開発から設計・施工、お客様探し、入居後の維持管理まで手がけていました。この大型団地などの開発で培ったノウハウを物流施設に転用したわけです。

もっとも、ゼロからのスタートですから、最初からうまくはいきません。例えば立地の選定や獲得は特に難しかった。好立地は当然誰もが欲しいわけで、そんな土地をどう獲得するかに頭を悩ませました。当時の樋口武男社長の号令で、土地購入までの稟議スピードを可能な限り早くしようと、稟議を回す人数を極力絞るといったことにも取り組みました。悠長に稟議を回している間に他社に取られかねませんからね。一例にすぎませんが、それぐらいの意気込みでどんどん決裁を早めていきました。やはり早い結論が売り主にとっては安心感になります。大和ハウス工業では「スピードは最大のサービス」が合言葉になっています。

【図表】成功の核心「三刀流」が生む圧倒的スピード

営業担当の後にはぺんぺん草も生えない

それに当社には全国に拠点があり、営業担当者が何千人といます。大和ハウス工業はすっぽん営業とか、「大和ハウス工業の営業担当者が通りすぎた後にはぺんぺん草も生えない」と言われるほど、営業力の強い野武士集団です。そんな営業担当者たちが地主様に直接会って交渉します。

金融機関や不動産会社から情報をもらうだけではなく、オーナー様や行政と直接交渉できるのが我々の強み。そこまでやる会社は、全国規模の会社ではあまりないと思います。営業担当者が建設も不動産もリーシングもわかり、ワンストップで対応できるのでスピード感がまるで違う。競合に負けないというわけです。

(構成=荻島央江 撮影=門間新弥(大友氏) 写真提供=大和ハウス工業)

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