始めたきっかけは「面白そうだから」
印刷代の高騰やネット通販の普及で、カタログ通販業界には逆風が吹いています。そんな中、当社の成長を牽引しているのはホテル事業です。
2025年3月期のプロパティ・ホテル事業の売上高は約360億円。全体の17%を占め、アパレル・雑貨通販に次ぐ大きな柱となっています。
私がホテル経営に興味を持ったのは約20年前、渋谷・桜丘町の220坪の土地を取得したのがきっかけです。テナントビルを建てるか、それともマンションにするか。考えた末に「ホテルがいちばん面白そうじゃないか」と。最初はただそれだけでした。
もちろん私はホテル経営の素人です。現場で働いてくれたのは、全員、派遣スタッフでした。彼らにすべてを任せていましたが、それがうまくいってしまった。渋谷という立地がよかったのです。それでホテル事業の面白さに目覚め、赤坂、新宿と都市型ホテルをいくつか開業しました。
自信を深めたのは、その後です。07年、岩手・花巻温泉郷にあった旅館を買収しました。魅力ある場所でしたが、設備が古くて大赤字の状態でした。これをリノベーションし、庭もきれいに整備したところ、売上高は倍増。短期間で黒字化できたのです。そこで初めて「リゾートホテルもやれるぞ」と手ごたえを感じ、ホテル事業に力を入れることにしました。
なぜ未経験の事業で成功できたのか。よくそんな質問を受けますが、はじめから私は何の経験も持っていません。創業当時のビジネスは印鑑の訪問販売です。通販事業を始めたときも、カタログなんて作ったこともなかった。ファイナンスや化粧品販売も同じで、すべてゼロからのスタートが当たり前でした。ホテル事業もその延長線上なので、特別に気合を入れて決断したわけではありません。面白そうだな、という好奇心で始めたのです。
「既存事業のノウハウは活かせたのですか?」と聞かれることもあります。例えば、通販事業で培った膨大な顧客データベースがホテルの集客に役立っているのではないか、と。それも、まったく関係ありません。
通販で化粧品を買ってくださるお客様に洋服をおすすめしても、ほとんど効果はありません。それぞれの事業は「幹」が違うのです。既存事業の顧客リストを他事業に活用できるだろう、という考えは通用しません。私自身、過去に何度も試しては失敗して、身をもってこの法則を知りました。ですから、カタログ通販とホテルは完全に別物として取り組みました。
ゼロからのスタートを恐れる理由はありません。むしろ、素人だからこそやりやすいです。素人は業界の常識にとらわれず、自由に動けるからです。
当社には、ホテルの専門家という意味での「プロ」はいません。事業を動かす中心人物は、未経験の社員です。そして、ホテルに詳しいコンサルタントやデザイナーなどの「プロ」には社外から協力してもらいます。
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