「つきあってられない」当時の社長に大反対

クルーズトレイン「ななつ星in九州」が運行を開始して12年。「コンデナスト・トラベラー リーダーズ・チョイス・アワード」(トレイン部門)で2021年から3年連続で1位に選ばれるなど、今や世界でも評価される列車に成長しました。3泊4日のツアー価格は2名1室でお一人135万円から。ありがたいことに、毎回多くのお申し込みを頂戴しています。リピーターのお客さまも少なくなく、最多で14回ご乗車された方もいらっしゃいます。

古宮 洋二
古宮 洋二(ふるみや・ようじ)
九州旅客鉄道 社長
九州大学工学部卒業後、日本国有鉄道入社。その後、1987年九州旅客鉄道に入社。2012年に取締役クルーズトレイン本部長兼総務部長に就任し、「ななつ星in九州」を推進。専務執行役員などを経て、22年4月から現職。鉄道運転士の資格を持つ。

この事実に社内でもっとも驚いているのは私かもしれません。何を隠そう、豪華列車の企画が持ち上がったとき真っ先に反対したのが私でしたから。

当時社長の唐池恒二(現相談役)が「豪華列車をつくりたい」とぶち上げたのは10年4月です。その時、私は列車やダイヤをつくる運輸部長。社長室に呼ばれて意見を求められたときは「社長の道楽につきあっていられません」とはっきり言いました。

理由は2つ。まず11年3月に九州新幹線全線開業、博多駅ビル開業というビッグイベントが控えていたこと。そこに全力投球する必要があり、他のことをやる余裕はありませんでした。

もう一つ、事業としても疑問でした。「お客さまが在来線に1日乗れば鉄道収入1万円」が当時の鉄道員の常識。30人が乗車して年間300日稼働しても年間1億円の売り上げになりません。数十億円かけて列車をつくれば確実に赤字です。

しかし、唐池はお構いなし。反対する私をプロジェクトの責任者にしてしまいました。そこから私の苦悩の日々が始まったのです。

具体的にプロジェクトが動き始めたのは、九州新幹線全線開業と博多駅ビル開業が無事に終わった後の11年5月でした。リサーチした結果、乗り越えなくてはいけない課題が4つ浮かびあがってきました。「コース」「車内サービス」「車両」「価格」です。

コースは当初、2泊3日の週2回を考えていました。ただ、それでは現役世代のお客さまは乗りにくい。そこで平日3泊4日、土日1泊2日にして、平日はそもそも想定していたリタイアリッチ、週末は若い方にもご利用しやすいように設計しました。

3泊コースは2日目に高級旅館に宿泊します。3泊すべて車両に泊まると体への負荷が大きいですし、車両に積める水や列車に給油できる容量を考えても1泊2日が限度。2日目の夜に高級旅館でくつろいでいただくのは一石二鳥でした。

サービスは、私自身もホスピタリティが一流と言われているホテルやテーマパークに足を運んで勉強しました。お客さまの要望は断らないと評判の某ホテルに宿泊したときは、夜8時に「とんこつラーメンが食べたい」とリクエスト。「ありません」と言われてがっかりしました。ところが、次に宿泊したときにはきちんと用意されていた。顧客の嗜好を記録してサービスに活かしていたのです。

(構成=村上 敬 撮影=小西範和)

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