休日なのに、嫌いなあの人の顔が頭から離れない。不安になるのは脳科学的な理由があった。脳神経外科医が、週末に完全回復する7つの方法を紹介する――。
リセットボタンを押す男性のイラスト
イラストレーション=タカセマサヒロ

イヤな人を忘れるのに「気にしない」は逆効果

嫌いな「あの人」のことが、頭から離れない。しかも、リフレッシュしたい休日にまで考えてしまうのは、なぜなのでしょうか。その秘密を握るのは、私たちの脳の中で感情や記憶を処理している「扁桃体」という部分です。

扁桃体は恐怖・不安・喜びなどの情動を伴う出来事に強く反応し、海馬などと連携して記憶の固定化に影響します。情動が乏しい情報は一般に記憶に残りにくい傾向があります。野球が好きな人は何人もの野球選手の名前をしっかり覚えられますし、服が好きな人は横文字が続いていてもブランドの名前を覚えられます。これは、ワクワクした気持ち、楽しい気持ちが呼び起こされているからです。

扁桃体は、嬉しい、楽しいといったポジティブな感情よりも、恐怖や不安、怒りといったネガティブな感情を処理するときに、特に強く働きます。自分の命を守るために、一度でも危険な目に遭った場所や相手のことは「大事な情報」だとラベリングして、忘れないようにしているのです。

菅原道仁(すがわら・みちひと)
菅原道仁(すがわら・みちひと)
脳神経外科医。菅原脳神経外科クリニック院長、菅原クリニック東京脳ドック理事長。1970年生まれ。杏林大学医学部卒業。「人生目標から考える医療」のスタイルを確立し、心や生き方までをサポートする医療を行う。著書に『あの人を、脳から消す技術』(サンマーク出版)、『働きすぎで休むのが下手な人のための休息する技術』(アスコム)など。

イヤな上司や困った部下、自分を振り回す取引先のことが頭から離れないのは、扁桃体が「この人は要注意」という情報を記録したから。本来は「逃げたほうがいい」と判断するためにラベリングしているわけです。

問題は、現代社会では苦手な人がいるからといって、すぐに職場から逃げ出せないことです。脳が危険だと判断した対象から逃げられないからこそ、多くの人が悩んでいるのです。

さらに、私たちの脳は、特に「職場」での出来事を強く記憶に留める傾向があります。会社という場所が私たちの生活の基盤、つまり生存に直結しているからです。上司や同僚との関係は、私たちの評価や仕事の継続、さらにはキャリアの形成にまで大きな影響を与えます。そのため扁桃体は、職場での些細な出来事も、「生存に関わる重要な情報」として認識しやすいのです。

休日になっても職場のイヤな人の顔が頭に浮かんでいると、脳が警戒態勢を取り続けることになってしまい、疲れがうまく取れず、仕事のパフォーマンスの低下にも繋がります。

だからといって、「気にしない」と考えるのは逆効果です。思考の制御を担当する前頭前皮質が「これを考えてはいけない」と命令を出せば出すほど、扁桃体が「では、これは重要な情報なのだな」と認識し、その内容を強く記憶しようとすることが科学的に証明されています。

重要なのは、イヤな人を気にしないようにするのではなく、「脳から消す」こと。週末にイヤな人の存在をすっかり忘れる7つの方法をご紹介します。

リセット術① 平日と同じ時間に起きる

イヤな人を脳から消すためには、質の良い睡眠は欠かせません。休日の睡眠で最も大切にしてほしいのは、起床時間を平日と同じにすることです。平日が7時起きなら、休日も7時に起きましょう。