企業が発信する情報は「建前」ばかりで面白くない――。そんな常識を覆し、YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」を大人気チャンネルへと育てたプロデューサーのハヤシユタカさん。本書には彼の独自哲学と試行錯誤の日々が綴られている。

「YouTubeチャンネルを立ち上げた最大の目的は、本や文房具を直接売ることではありません。有隣堂という書店の“ファン”をつくること、それがすべてです」

ハヤシユタカ『愛される書店をつくるために僕が2000日間考え続けてきたこと』クロスメディア・ パブリッシング/1680円+税
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書店は価格や品揃えでの差別化が難しい。「だったら、面白いYouTubeをやっている有隣堂に行ってみよう」と思ってもらえる関係性を築く。ファンになってもらうにはどうすればいいか。たどり着いた答えが「素直」に「本音」を伝えることだった。多くの企業が発信する情報は、どうしても建前が多くなる。当たり障りのない情報では心に響かないし、視聴者の貴重な時間を使ってもらえない。企業らしからぬ「素直さ」で視聴者に「この会社はなんだか面白いぞ」と感じてもらうことを狙った。

「その象徴がMCを務めるキャラクター、R.B.ブッコローの素直な言動です」

たとえば、ガラスペンの魅力を伝える社員に「アマゾンで買ったほうが安くない?」と指摘する。

彼の素直さを引き出すために大事にしていることが3つある。

「1つ目は撮影が始まるまで、ブッコローとゲスト出演者を一切会わせず、台本のない新鮮な驚きを生み出すこと。2つ目は、ブッコローと出演者の『素直な発言』が光るように動画編集すること。そして3つ目が環境づくり。ブッコローの素直な発言を『面白い』と受け入れ、世に送り出すことを許容するチームを目指す。これが一番大切ですね」

ファンビジネスの本質が、この一冊に詰まっている。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2025年12月5日号)の一部を再編集したものです。

(インタビュー・文=向山 勇 撮影=市来朋久)

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