「行き当たりばったりですよ。そういう漫画ですから」
鳥嶋和彦氏は自身が担当した国民的漫画『ドラゴンボール』をそう評した。鳥嶋氏は同作のピッコロ大魔王や、『Dr. スランプ』のDr. マシリトのモデルになったことでも知られる伝説的編集者だ。
漫画編集者。1976年、集英社に入社。『週刊少年ジャンプ』編集部に配属される。鳥山明、桂正和、稲田浩司など人気漫画家を発掘育成。96年に『週刊少年ジャンプ』6代目編集長に就任。
『ドラゴンボール』は、当初、思ったほどの人気を得ることができなかった。そこで作者の鳥山明氏に、それまでの冒険譚からバトル漫画への大胆な路線変更を提案した。
以前、担当していた別の漫画で立て直しを図ったとき、衝撃的な体験をしたことがあった。自信のある回だったが、電車で『週刊少年ジャンプ』を読んでいた読者がその漫画を飛ばすのを目撃してしまったのだ。「面白ければ評価される」という傲慢な気持ちがあったことに気がついた。
漫画を雑誌で読んでもらうためには、ストーリーよりもキャラクターが大事。そこで、なんとブルマやヤムチャといった脇を固める人気キャラを一旦捨てた。「当たり前のこと。だって他のキャラが主人公の悟空を食っちゃってるんだから」(鳥嶋氏、以下同)。悟空の魅力を引き立てるためキャラを最小限に絞ると、バトル展開である「天下一武道会」が始まる頃には読者アンケートでベスト3に入るまでになった。
「直しができるのがいい漫画家。最初の読者である編集者が言っていることを聞けないのは、読者を意識していないということ」
『ボツ 「少年ジャンプ」伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』は、そんな鳥嶋氏が関わった人気漫画の逸話が赤裸々に明かされるとともに、仕事論が余すところなく綴られている。編集長時代には、『ONE PIECE』や『NARUTO』の連載を開始させた。部下である編集者たちに「1日1回連絡入れてね、あとはどこにいてもいい」とルールを明確にしたうえで、自由を与えた。仕事をしっかりしているかどうかは、上がってくる原稿を見ればわかる。仕事ができる人ほど、いちいちチェックされると煩わしい。
「チェックしない勇気が大事。チェックされないことの怖さで、部下は一生懸命仕事せざるをえなくなる」
会社にはびこる前例主義を次々と打ち破ってきた鳥嶋氏はこう語る。
「いかに仕事を自分に引き寄せ、わがままに仕事ができるか。それには自分のやり方を見つけること。そうすると、それまで息苦しく感じていたものから“攻略法”が見えてくる」
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