自民党が得意とする「選挙の顔の使い捨て」
「裏金議員の石破降ろしに負けるな」という声を背に、驚異的な粘り腰を見せて辞任を拒否していた石破茂首相だが、参院選での大敗50日目についに力尽きて自ら退陣を表明した。表明前夜に石破氏を支えてきた菅義偉元首相と小泉進次郎農水相が石破氏のもとを訪れていることから永田町では「同志だと思っていた菅・小泉に引導を渡されたことが退陣の決断の決め手になった」という見方が一般的だ。
そして退陣を待っていたかのように党員も参加する「フルスペック型(※1)」の総裁選が実施され、昨年石破氏に敗れた5人が再度名乗りをあげた。
※1:総裁選には党員・党友も投票する「フルスペック型」と、党員・党友の投票を省く「簡易型」がある。国会議員票295票に加えて、「フルスペック型」では、全国の党員などによる党員票295票を加えた590票で争われる。
これまでも何度も繰り返されてきた自民党の首相交代劇だが、今回も、1年前に「選挙の顔」として担ぎ出した石破氏を、それでは勝てないとなったとたんに、まるで用済みの古着を脱ぎ捨て、新しい見映えのいい衣装探しに奔走しているようだ。
憲政史上最長の在任期間を誇った安倍晋三元首相は、長期政権の驕りや緩みで支持率が低下して政権運営に行き詰まり、5年前、突如政権を投げ出した。以来、自民党は信頼を失った根本原因を自ら究明し、信頼回復の道を探るのではなく首相を交代させることで急場を凌いできた。
安倍氏の後、事実上の後継指名で首相に就いた菅氏は、選挙で連敗し、わずか1年で退陣した。フルスペックの総裁選で菅氏に代わる「選挙の顔」に選ばれた岸田文雄前首相も、当初は期待通り衆参の選挙に勝ち続けたが、派閥の裏金問題で自民党じたいが厳しい批判にさらされ、またも自民党総裁選を目前にして政権を投げ出した。
そして9人が立候補する乱戦を勝ち抜き、後継に選ばれたのが、自民党復活の「最後の切り札」と期待された石破氏だった。しかしその「選挙の顔」をしても、昨年の衆院選も今度の参院選も勝てず、1年足らずで退陣に追い込まれたのである。
このように、最近の自民党は度重なる不祥事や失政によって信頼を失いながら、その根本的な問題の解決や責任の明確化よりも、目先の選挙を凌ぐためのリーダーを担ぐことを繰り返してきた。総裁選候補者だけでなく、舞台裏で暗闘を繰り広げる菅氏や岸田氏、それに党内唯一の派閥を率いる麻生太郎元首相など主要登場人物の顔ぶれも変わらない。反省も責任感もなく、選挙の顔を作っては捨て去ることを繰り返す自民党は、もはや「責任政党」という名には値しなくなっている。
選挙に負けたのに辞めないと50日間粘った石破氏も、その石破氏から権力を奪われた遺恨を晴らすべく石破降ろしに執念を燃やした麻生氏や旧安倍派の議員らも、国民の意識とはかけ離れた内輪の論理で争っている。これでは次の選挙の顔を誰にしようが、現在の難しい政治状況を乗り切ることはできないだろう。
「選挙の顔の使い捨て」は、実は以前から自民党の得意とするところだった。昭和の終わり頃、政治記者駆け出しの筆者は竹下登元首相の番記者だった。消費税の導入やリクルート事件で政界が揺れ続けていたある日、竹下氏がこんなふうに話したのを覚えている。
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