日本周辺の海面水温が「異常な上昇」を記録

今年の夏、日本列島では観測史上最高の気温が次々と更新される猛暑が続き、多くの人が「異常気象」を実感したと思います。しかし、私を含む気象学者は、近年におけるそのような猛暑が、もはや「異常」ではなく、新しい日常=ニューノーマルになりつつある、という懸念を強く持っています。

もしそうであるならば、毎年のように続く今の猛暑を、「異常気象」としてやり過ごすことはできません。日々の生活や産業など社会全体が、気候の基盤そのものの変化という厳しい現実に否応なく直面しているからです。

ではなぜ、これほどまでに暑かったのでしょうか。まずは気象学的な視点からその理由を解説してみましょう。

従来、猛暑の年には太平洋高気圧やチベット高気圧の張り出し、偏西風の蛇行といった気象条件が理由として指摘されてきました。ただ、それらは確かに「猛暑」のトリガーではあるものの、40℃を超えるような気温が続く状況を説明しきれていません。なぜなら、同様の気象条件が観測された過去の年も、今夏のような突出した気温上昇が観測されたわけではなかったからです。

そこで注目すべきは、今夏の猛暑の背景にあった最大の要因が、日本周辺の海面水温の異常な上昇にあったことです。

今年、7月時点で日本近海の平均海面水温は過去最高を1℃上回っていました。(※1)北海道から九州まで広範囲にわたる海面水温が月平均で1℃上昇することは、統計的に見て極めて稀な事象です。その背景にあったのが、6月における異例に早い梅雨明けです。例年であれば曇天に覆われる時期に、今年は快晴が続きました。しかも、一年で最も日照時間が長い夏至前後のタイミングで強い太陽光が海面に降り注ぎ続いたのです。

※1:2024年7月の平均海面水温は約24℃で、この時点で過去最高だったが、25年はこれをはるかに上回った。次の図版を参照

結果として、海洋が短期間に大量の熱を吸収し、7月には記録的な高水温となりました。6月の梅雨の時期に蓄積されたその熱エネルギーが、7月から8月にかけて大気へと供給されたわけです。周囲を海に囲まれた日本列島には、風が西から吹いても東から吹いても、常に海面上を経由した空気が流入します。よって、海面水温の上昇は大気の「初期条件」を恒常的に高温な状態へと押し上げることになります。この基盤の上に高気圧の滞留やフェーン現象といった短期的要因が重なれば、統計的に「観測史上最高」が頻発するのは必然なのです。

そして、もう一つ見逃せないのは、大陸の影響です。今年は春から初夏にかけてユーラシア大陸内部――チベット高原やタクラマカン砂漠の地表温度が、温暖化の影響で急激に上昇しました。結果、大陸で加熱された大気が偏西風を押し上げ、日本付近から梅雨前線を早々に北へ追いやりました。これが6月中に梅雨が明けてしまった直接の要因でした。

つまり、大陸の温暖化→梅雨前線の消失→早期梅雨明け→海洋の加熱→夏の猛暑という連鎖が形成されたのです。

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