なぜすぐにモノがあふれてしまうのか。なぜスッキリと暮らせないのか。本当に良い一年を迎えるためには、モノやコトを手放す必要があるが、どうすればできるのか。「断捨離」を提唱するやましたひでこさんに聞いた――。

何かを足す前に「何を手放すか」を決める

年末年始は、日本人にとって特別な時節です。多くの家庭では家の中をひっくり返すような大掃除を行い、積もりに積もった埃を払い、新鮮な気持ちで新しい年をスタートさせたい――そんな思いを抱いていることでしょう。私自身も、年末の掃除を単なる家事ではなく、一年を締めくくる「お祓い」のような営みとして、とても大切にしています。

やました ひでこ
やました ひでこ
学生時代に出逢ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離®」を日常の「片付け」に落とし込み、誰もが実践可能な自己探訪メソッドを構築。空間を新陳代謝させながら新たな思考と行動を促す断捨離は、日本のみならず海外でも圧倒的な支持を得ている。著作・監修を含めた関連書籍は国内外累計700万部を超える。新著に『職場の断捨離 空間から始める、意思決定の整流術』(日本能率協会マネジメントセンター)。

12月31日が1月1日に変わるだけ。今日が明日になるだけ。それでも、私たちはそこで区切りを感じます。年が変わると、目に見えない“気の流れ”がガラッと変わるような感覚を得ることはないでしょうか。これまで親しくしていた人との距離が新しい年になった途端、少し遠くなったように思うこともある。そんな不思議な変化を、誰もが心のどこかで感じているはずです。私は、この年越しの瞬間を、住まいを変えることなく行える「時間の引っ越し」と捉えています。まさに「断捨離」をするのに最高のタイミングといえるでしょう。

皆さんは、2026年をどんな一年にしたいと願っているでしょうか。私がまずお伝えしたいのは、「何かを足す前に、『何を手放すか』を決める」という発想です。新しい手帳を用意し、新しい勉強を始め、新しい習慣を加えようとする。その意欲は尊いものですが、すでに日々の暮らしも頭の中も予定でいっぱいなら、そこにどれほど“よさそうなもの”を上乗せしても、うまく根づきません。新しいものが入る余地がないからです。

やましたひでこ『職場の断捨離』(日本能率協会マネジメントセンター)
やましたひでこ『職場の断捨離』(日本能率協会マネジメントセンター)

断捨離は、そうした“余地のなさ”に気づくためのきっかけでもあります。住まいの空間の見直しから始めて、モノの持ち方について考えることで、心の在りようや時間の使い方にも自然な変化が生まれてきます。目に見える環境がすっきりすると、頭の中のノイズが減り、選択するときの迷いも少なくなるでしょう。結果として、仕事のパフォーマンスやお金との向き合い方、人間関係にまでよい影響が波及していくのです。

年末年始の今、このページを開いているということは、あなたも「2025年をきちんと締めくくりたい」「2026年は違う景色を見たい」と感じているのかもしれません。

この一年を、少しでも軽やかに、自分らしく生きる一年にするために──まずは「捨てる」という入り口から考えていきましょう。

「断捨離」とは空間を自分で選び取る営み

私が提唱した「断捨離」という言葉は広く知られるようになりましたが、「捨てること」そのものが目的だと思われている節があります。けれど本来、断捨離とは捨てる行為を通して、自分の環境をよりよく整えていくための技法です。捨てるのは、生活を軽やかにし、心地よい空間をつくるための手段にすぎません。

私たちは日々、さまざまなモノに囲まれて暮らしています。そのモノたちが自分の生活を支え、人生を充実させる「味方」になっているのか。それとも、気づかないうちに生活や思考を圧迫し、主体性を奪う「敵」になっているのか。断捨離は、まずその問いかけから始まります。

本来の断捨離とは、空間を「自分の意思で選び取り、つくり替えていく」営みです。どんな環境に身を置くかによって、心の在りようが決まり、行動の方向性まで変わっていきます。住まいの空間を整える行為とは、自分自身を整えることと同義なのです。

本来、モノは私たちの暮らしを支えるために存在しています。必要なときに役目を果たし、生活を助けてくれる味方です。ところが、量が過剰になると、その関係が一気に逆転します。役に立つどころか、動きを妨げ、判断を鈍らせ、空間全体の質を下げてしまいます。どんなに高いブランド品でも、高機能な家電でも、量が過剰になれば自分本来の力を奪う「敵」になってしまうのです。