無意識にしている会話で、相手と発言交替するまでの時間は平均0.2秒。その瞬間、私たちの頭の中では何が起きているのか? 本書は、YouTube、ポッドキャストチャンネル「ゆる言語学ラジオ」の話し手、水野太貴さんがその問いを掲げ、言語学の視点から、発見を重ね、知見を広げていく過程を綴る。

0.2秒間に、人は驚くほど複雑な推測や判断を行っている。その数字は編集者として日々言葉を操る水野さんにとっても、驚きの事実だった。

「熟考してから話す友人との付き合いを通じて、『なぜ自分は沈黙を待つことができないのだろう?』と考えるようになりました」

水野 太貴
水野 太貴(みずの・だいき)
1995年、愛知県生まれ。名古屋大学で言語学を学ぶ。出版社で編集者として勤務する傍ら、登録者36万人超のYouTube、ポッドキャストチャンネル「ゆる言語学ラジオ」の話し手を務める。著書に『きょう、ゴリラをうえたよ 愉快で深いこどものいいまちがい集』(KADOKAWA)ほか。

興味深いのは、動物のコミュニケーションもおおむね1秒以内に話者交替が完了する、という研究結果である。

「生物全般にとって、この反応速度は生存に直結する要素なのかもしれません。でも、熟考した後でないと話すのが難しい人にとっては、短すぎる時間ですよね」

「ゆる言語学ラジオ」の活動と本書執筆のための調査が、水野さんの世界の見方を変えていく。帯の背に記された「普通って何だ?」が、彼の最大の気づきを代弁している。

「自分を“普通”と思って生きてきたことに、疑問が湧きました。自分が生きやすいとしたら、努力したからではなく、たまたま今ある社会にうまくはまっているだけだなと」

水野太貴『会話の0.2秒を言語学する』(新潮社)
水野太貴『会話の0.2秒を言語学する』(新潮社)

会話も同じだという。絶えず話し続ける側が主導権を握りやすく、競争に負けた側がペースを合わせざるをえなくなる。その気づきの原点は学生時代にあった。

「大人数の飲み会の幹事をした後、共同幹事をしていた後輩から『楽しそうにしていない人をなぜ会話に入れなかったのか』と叱られました。今思えば、その指摘は正しいなと。相手の“普通”に自分が歩み寄れればよかったんです」

会話に正解なんてないし、流暢にしゃべる必要もない。これらは水野さんが本書で掲げるテーゼである。

(インタビュー・文=小川知子 撮影=工藤睦子)

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