SNSで流行する新しい言葉の意味がわからなかったり、ハラスメントを恐れて会話を避けてしまったりと、言葉の使い方について悩む人は多い。そんな今、独自の視点から言葉をとらえ続ける歌人・俵万智さんの初めての論考作品が10万部を突破した。
「クソリプを知る者はクソリプに勝つ。あ、いま急にことわざを思いつきました(笑)」
SNSの投稿に対する的外れで失礼なリプライ(返信)をクソリプと呼ぶが、その言葉にも「人の心が貼りついている」。嫌な言葉にあえてフタをせず、その背景にある心の動きを観察してみることは、ひとつも無駄ではないという。
「生きることと“言葉”は、まさに直結していると思います。生きるうえで言葉は大切だし、言葉が生きるためにはどうしたらいいのかも考え、いろいろな意味を込めてこのタイトルに決めました」
本書は中高生から高齢者まで幅広い世代に受け入れられた。「親子の会話の場面に自分の本があるというのは、すごくうれしい」と俵さんは語る。
本の冒頭には、「普通の人が普通に使う書き言葉としての、日本語の足腰を鍛えることが大切」とある。日本語の足腰を鍛えるとは、はたしてどういうことだろうか。
「今は、まくしたてて言い負かしたら勝ちみたいな風潮もあるけれど、短い一言でも心に届く言葉はあります。言葉って、量よりも、ひと言ひと言の質が大事だと思うんです」
1962年生まれ。歌人。早稲田大学第一文学部卒業。学生時代に佐佐木幸綱氏の影響で短歌を始める。88年に現代歌人協会賞、2021年に迢空賞を受賞。『サラダ記念日』のほか、歌集、評伝、エッセイなど著書多数。
スマホやチャットの普及による日本語の変化については、「それほど心配はしていません」という俵さん。「いつの時代も若者の言葉には年配の人が眉をひそめるもの。でも、若い人たちが生き生きと、使い勝手のいいように変えていくのが健全な姿なのでは」
言葉を選ぶ力を鍛えるためにおすすめの習慣を尋ねると、「それはもう、短歌ですよ」。短歌はスキマ時間で作れるところが強みだ、と俵さんは続ける。「型に収めるために立ち止まって、選んだり、削ったり、入れ替えたりして自分の言葉と向き合う時間を持つことはすごく大事な気がしますね」
目の前にいる相手にさえ、思いがうまく伝わらないことは多いもの。時に言葉は人を傷つけることもあるが、怖がるばかりではなく、「心を開いて、相手との関係をつくれるのも言葉」だと俵さんは明るく語ってくれた。
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