ゲームの中なら人は自己を超えた課題を乗り越えられる

「正攻法で解決できない課題が世の中にはたくさんある。そのときに、武器として使える本にしたかった」。伊藤真人は、自著『ゲームフルデザイン』についてそう語る。

本書は、人を夢中にさせるゲームの仕組みを、ビジネスや日常生活の課題解決に応用する方法を言語化したものだ。

伊藤真人『ゲームフルデザイン』(翔泳社)
伊藤真人『ゲームフルデザイン 「やりたくなる」を生み出すゲーミフィケーションの進化』(翔泳社)

「UX設計の現場では、ストレスをなくすことが常識ですが、ゲームの中では、困難が人を夢中にさせることもある。達成感という報酬があるからです。ゲームの中で人は、自己を超えた課題に挑み、乗り越えます」(伊藤、以下同)

伊藤は2010年、ゲーム企業セガに入社。ゲームプランナーとして、年間100本近い企画書を作成し、「面白さとは何か」を徹底的に言語化する訓練を積んだ。

「この夢中にさせる技術を、ゲームの中だけで終わらせたくない」。伊藤は、16年に子会社の立ち上げに参加、非ゲーム領域への応用を模索した。しかし、苦難の連続だった。

「ゲームの手法をビジネスに生かすのは、行儀が悪いと思われていました。提案しても形にならず、『ゲームって、役に立たないのか』と悩んだ時期もありました」

転機は20年、コロナ禍だった。急速に進んだデジタル化の中で、「ツールを導入しても使われない」という課題が噴出した。「使いたくなる仕組みこそが必要だ」と多くの人が認識した瞬間だった。その頃、伊藤たちの方法論は、すでに整いはじめていた。

「ゲーム風の要素だけでは人は動かない。粘着性のある体験を設計することが本質です」

その知見を社会課題に応用した事例が、エンタメ型防災訓練「THE SHELTER」だ。日本は災害が多く、防災意識は高いが、防災訓練などの行動に結びつかないというギャップがある。そこで伊藤は、防災訓練をゲーム化。脚本や演出を自ら手がけ、手応えを感じたという。

伊藤真人
伊藤 真人
セガ エックスディーCOO。2010年セガ入社。12年、スマホゲーム向けマーティングプラットフォーム「Noah Pass」の立ち上げに参画し、総ユーザー数1億超規模に。16年クロシードデジタル(現セガ エックスディー)の立ち上げに参加。

こうした発想は、伊藤の生き方そのものに根ざしている。

(インタビュー・文=田中健介(本誌編集部) 撮影=宇佐美雅浩)

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