風を感じながらビールを飲む
箕面大滝は大阪の中心部から車で30分、ガンバ大阪のホームタウンの一つ、箕面市の国定公園内にあります。駐車場から山道を下ること約20分、33メートルほどの高さから落下する水が、豪快に飛沫を上げています。
今日の気温は35度と厳しい暑さのはずですが、ひんやりと涼しい風が吹いています。ここで持参したご当地の「箕面ビール」をいただきます。これはラベルに青と黒の縦縞ユニフォームを着た「ガンバのおさる」が描かれた、特別な一本。くぅー、うまい。開放的な雰囲気の中で飲むビールは最高です。あっという間に飲み干してしまったので、近くの売店でおかわりをもう2~3本買いましょう。箕面ビールも売っています。
昔観た、『ビッグ・ウェンズデー』(1979年)というアメリカの青春映画に、ビーチで夜を明かした主人公が、起き抜けに瓶ビールを呷って波乗りに向かうシーンがありました。気だるげで自由奔放なスタイルに感動して、それ以来、風を感じながら飲むビールに格別の思い入れを抱くようになりました。湘南ベルマーレで社長を務めていたときは平塚に住んでいたので、湘南海岸で飲むのが日常でした。大阪に来て半年、今は府内でビールを美味しく飲めるスポットを開拓中です。
人生でいちばん美味しかったビールは、パラグアイの「Baviera」です。FIFAワールドカップ日本組織委員会に勤めていた縁もあり、南米サッカー連盟本部のあるパラグアイの首都アスンシオン近郊の町、イタグアに「日系ベルマーレ」を設立しました。そのときに愛飲していたのですが、ほどよい苦みとフローラルな香りが調和して、とても飲みやすいビールでした。残念ながら日本で見かけたことはないのですが、現地まで片道40時間の旅路を考えると、また飲みたくても簡単には行けません。
現在は単身赴任でもあり、休日は爽やかにビールを飲んだら、掃除・洗濯に取り掛かります。午後は読書。紙の書籍の手触りや匂いが好きなんです。最近は以前に比べて読むペースが落ちましたが、週に1~2冊は読んでいます。好きなのは歴史小説で、渋沢栄一の半生を描いた『雄気堂々』(城山三郎著)は何度も読み返しています。状況に応じてダイナミックに立ち位置を変える大胆さ、人を巻き込んで事業を育んでいく姿勢は、まさに私が理想とする経営者像でもあります。
全社で同じ熱量を持つための言葉の使い方
チーム創設以来初の、パナソニック外から招聘された社長ということで「どのようにクラブを変革しますか」と聞かれることがありますが、私には「何かを大胆に変えなければいけない」といった切迫感や気負いはありません。問題があれば変えるし、なければそのままでいい。社長として心がけているのは、誰に対しても明るくオープンでいることです。そうすれば、自然と人を巻き込んでいけると思っています。
そのうえで、フロントスタッフに求めているのは「あなたの取り組んでいる仕事が、勝ち点3にどう結びついているのかを考えて行動してほしい」ということです。正解はありませんが、これを意識するだけで全員が同じ方向を向いて進んでいけるようになるはずです。選手に対しては「なぜガンバでサッカーをしているのか」を、機会があればチームメートと話してほしいと思っています。このプロセスが、それぞれ異なる目標や状況を抱えた選手たちが、シーズン勝利という同じゴールに向かうための一体感を生むでしょう。
私のミッションは、戦力流出や補強、育成状況などを見極めながら、数年先までを見越して適切なチーム編成をすることです。クラブの目標を聞かれれば、フロントも選手も「優勝です」と答えますが、私はその覚悟を問いたい。単なる目標を答えているのか、何が何でも掴み取る気概があるのか。サポーターは本気で信じてくれています。我々は彼らの熱意に応えるクラブでなければなりません。
今シーズンのわがチームは、主力選手の負傷離脱など課題もあり、現在までに勝ち点34で10位にとどまっています(8月1日現在)。私はヤケ酒はしませんし、不満を翌日に持ち越さないタイプですが、考えごとをしながら飲んでいると、寝つくのが遅くなってしまいます。とはいえ、完全に希望が潰えたわけではありません。残り14試合を全力で戦い、リーグ優勝を目指します。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2025年8月29日号)の一部を再編集したものです。
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