せっかちだからこそ酒や食品を熟成させる

小ぶりなオーク樽にウイスキーを静かに注ぎます。琥珀色の液体がロートを伝って流れ込むときにふわりと漂う豊かな香りに、思わず頬が緩みます。昨夜は、餃子の皮にチーズとジャコ、ネギを散らしてフライパンで焼いたピザ風のつまみで、ハイボールを5~6杯楽しみました。いま注いでいるのは、その分の補充です。

この樽に入れて3週間ほど熟成させると、手ごろな価格のウイスキーが、まるで高級ウイスキーのような香りと味わいに変わります。変化は銘柄によって異なりますが、たとえば「ジョニーウォーカー〈赤〉」は、スパイシーな味わいから刺々とげとげしさが取れて、甘みが引き立ちます。サントリーの「角瓶」は、もともと平均的で癖のない味わいですが、まろやかで芳醇な風味に変わります。

熟成の楽しみ方を知ったのは、半年ほど前のこと。偶然立ち寄ったバーでカウンターの奥に小さな木樽がいくつも並んでいる光景を見て、興味を持ちました。バーテンダーに飲み比べを勧められ味わってみたところ、想像以上の違いに驚き、自分でも試してみたいと思うようになったのです。

(構成=渡辺一朗 撮影=宇佐美雅浩)