たくさん本を読んでいるにもかかわらず、その内容が実にならないと悩む人がいます。これは、読書というインプットに時間を割きすぎていることが原因なのではないでしょうか。限られた時間をどう使うか考えると、学びをインプットする割合を減らし、実践する時間を長く取ることが必要です。書いてあることを真似したいのならば、読んだ本の内容を「知っている」ではなく、「できる」を目指さなければいけません。

SoZo代表取締役 あつみゆりか Yurika Atsumi 1976年、アメリカ生まれ。法政大学法学部法律学科卒業後、IT企業に入社。マイナビウエディング初代編集長を経て、16年から現職。プライベートでは3児の母。著書に『今度こそなりたい自分になる! 1冊まるごと「完コピ」読書術』(PHP研究所)。
SoZo代表取締役
あつみゆりか Yurika Atsumi
1976年、アメリカ生まれ。法政大学法学部法律学科卒業後、IT企業に入社。マイナビウエディング初代編集長を経て、16年から現職。プライベートでは3児の母。著書に『今度こそなりたい自分になる! 1冊まるごと「完コピ」読書術』(PHP研究所)。

読むべき本はたった1冊でいい。私淑すべき「師匠本」を決めて、その内容を完コピして実践することが一番だと私は考えています。ちょっと試して上手くいかなかったら別の本を読み、また上手くいかなかったらさらに別の本を手に取る、という多読の習慣は時間と労力の無駄使いです。

服のコーディネートでいえば、ファッションセンスのない人が複数のブランドの服を組み合わせたら、ちぐはぐになるのが当然です。これだと決めたひとつのブランドに絞るほうが、コーディネートは決まりやすくなります。同じように、時間管理が上手にできない人が時間術の本を10冊読んだところで、それぞれのエッセンスを拾いあげて整理するのは難しい。また、複数の本の内容を試そうとしても、全部を実行できずに、「この本はよくなかった」という他責思考になりがちです。それより、たった1冊の本を選んで「この本をインストールできるかどうかは自分次第」という自責思考になったほうが効果的です。

振り返れば私自身、読書から学ぶという点において劣等生でした。専業主婦を経て復職したときにできないことが多すぎ、スキルを上げようとしてビジネス本をたくさん手に取りました。ところが、書いてあることの半分も理解できなかったり、実体験と重ならなくてつまらないという感想を抱いたり……。意識だけ高くて自分のレベルに合わない本を選び続けていたので、読み切ることさえできず、インプットすらままならない状態だったのです。

当時、ブライダルメディアのチームをマネジメントしていて、仕事のやり方に行き詰まり、部下との関係でも悩んでいました。そのタイミングで手に取った本が『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海著)でした。『もしドラ』の通称でベストセラーになったこの本を、会社帰りの電車の中で読んだ私は号泣しました。そこに描かれているマネジメントが自分と真逆だったので、衝撃を受けたのです。

ドラッカーの『マネジメント』はエッセンシャル版に挑戦して、途中で投げ出した過去がありました。それに対して小説の『もしドラ』は読みやすく、マネジメント論が腑に落ちたのです。

そこで従来のやり方は捨て、この本を師匠と仰いで、チーム全員で内容をまるごと完コピしようと決めました。その通りに実践したらマネジメントは上手くいき、チームの売り上げは半年で3倍に伸びたのです。1冊の本の書いてある通りにやり抜く――。これを私は「完コピ読書術」と名付けました。

自宅の本棚に眠っている師匠本を探し出す方法

師匠本はどうやって探せばいいのでしょうか。

まず本を決める前の段階で必要なのは、自分が何になりたいかというゴールの設定です。私の場合、「みんなをリードできるマネージャーになりたい」という気持ちがあったからこそ、『もしドラ』が深く心に刺さりました。スポーツ選手は、オリンピックの表彰台の上で首に金メダルをかけられている自分の姿をイメージしながらトレーニングすると聞きます。それと同じように「なりたい自分」を鮮明に思い描き、そこに至るのに必要な師匠本を探していくのです。

えてして、大事な本は自宅の本棚に眠っています。マーケティング用語で、消費者の隠れた本音や無意識の心理、購買意欲の核心を「インサイト」と言います。関心のあるジャンル、人物への憧れなどから人は本を手に取るわけで、自宅の本棚こそ、自分にとってインサイトの集合体なのです。つまり、本棚には師匠本の候補が並んでいるわけです。

(構成=石井謙一郎)