「寺社の拝観料に対する課税を求める意見」が多かった

意見の中に、京都ならではの内容があった。「寺社への拝観料に対する課税等を求める意見」で、242件もあった。

かつての古都税騒動で拝観停止を決行した南禅寺
撮影=鵜飼秀徳
かつての古都税騒動で拝観停止を決行した南禅寺

「古都税の議論をもう一度しっかりすべき」「拝観料駐車料金は税金として納めるべき」「参拝料を取っている寺については、1人あたりの寄付をお願いしてはどうか」「神社仏閣、宗教法人への課税を実行すべき」「寺や神社から固定資産税等を徴収できないか」など。京都市民と寺社仏閣とはもちつもたれつの関係であるが、市民の寺社にたいする目線は厳しい。

古都税(古都保存協力税)とはどういうものだったのか。1983(昭和58)年のことだ。京都市は財政状況の悪化にともなう文化財保護の財源を確保するため、拝観寺社や観光施設計40施設(うち寺社は36施設)に課税する古都税条例案を可決した。これは拝観料から、大人1人あたり50円を徴収するものだった。

宗教施設の拝観料は原則、非課税と決められている。古都税導入に、地元京都仏教会は「信教の自由の侵害」などとして、猛反発した。条例の無効化を求めて提訴するとともに、条例施行にあわせて1985(昭和60)年、清水寺や金閣寺、銀閣寺、南禅寺などの有力寺院が山門を閉め、拝観を停止にした。

拝観停止によって、門前の土産物店や旅客業など観光業に多大なる影響がでた。仏教とも深い関わりのある京都の夏の風物詩、五山送り火の開催も危ぶまれる事態になった。

京都市と仏教会との古都税紛争は5年にも及ぶ。1988(昭和63)年に条例は廃止に追い込まれた。結果的に京都市が京都仏教会に屈するという、異例の事態となった。京都経済が、寺院に依存していることを証明することにもなった。

この、40年前の古都税紛争でのトラウマを抱える京都市は、市民の意見に対して、「古都税については導入すべきでないとの意見があり、本市では具体的な検討までは行っていない。拝観料や宗教法人が所有する固定資産については、地方税法による原則課税できない」との見解を示している。それでなくともコロナ禍で観光需要が落ち込んでおり、寺社仏閣ともめている場合ではないのだ。