なぜ日本人の給与は上がらないのか。経営コンサルタントの倉本圭造さんは「安倍・菅政権時代の経済対策会議に参加していたデービッド・アトキンソン氏の主張が参考になる。彼によれば、日本の中小企業は『あまりにも小さいサイズ』に放置されている。それが給与が上がらない原因だ」という――。(第2回)
日本旗の前に落ちるグラフ
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具体的な経済政策に欠けている岸田政権

「経済」の話をする時に難しいのは、「経済」の話だと、一企業内部の話をしている時以上に簡単に「敵側のあいつらが全部悪い」という話にしてしまいやすいことです。特に、「市場」を絶対的な神としてありとあらゆる抵抗勢力を斬り伏せてしまおうとしたり、逆に「市場」という仕組み自体を全て拒否してしまおうとしたりする「二つの極論」に簡単に吸い寄せられてしまうのが難しいところです。

2021年10月に就任した岸田文雄首相は、「小泉政権時代以降の新自由主義(≒市場原理主義)を転換する」と表明し、日本は「新しい資本主義」の道を進むべきだと提唱しています。その路線は、平成時代に吹き荒れた「○○をぶっ壊す!」型のビジョンとは違って曖昧で分かりづらいと批判されがちですし、実際岸田政権も特に具体的な「コレ」といった政策を打ち出せてはいないようです。

ただ、その「ど真ん中」の道をなんとか具体化しなくてはいけない状況にあるのは確かです。そして「二つの極論」に引っ張られず、曖昧で分かりづらい「大上段の理想論」の中身を詰めていくためには、何か「とっかかり」となるような共有イメージが必要です。

この「とっかかり」となる共有イメージを説明するにあたって、私は普段の言論活動において色々と工夫をしてきたのですが、実際に日本政府の政策決定に影響を与えている2人の論客の名前を出して、その間の「違い」を説明するのが一番伝わりやすいと感じています。本書でもその「2人の論客」氏にご登場いただきましょう。